では、2部に落ちた企業が再び1部に返り咲くことはあるのか。東証2部降格というのは、プロ野球選手の“2軍落ち”というより、Jリーグ球団の“J2陥落”にたとえたほうがしっくりくる。
降格すると主力選手は次々にJ1チームに引き抜かれ、観客動員数は減り、残った選手の年俸も下がる。その悪循環でさらに下部リーグに転落するチームも珍しくない一方で、屈辱をバネに選手たちが奮起し、1シーズンでJ1復帰を果たすケースもある。企業の場合はどうか。
「オリコは、みずほ銀行の支援などで立ち直り、降格から3年後の2011年に東証1部に復帰した。シャープも鴻海の支援で債務超過が解消し、来年にも1部復帰が予想されています。しかし、過去に復帰したのはオリコ1社だけです」(前出・植木氏)
しかも多くの2部降格企業は2部に踏みとどまることすら叶わず、上場廃止に追い込まれている。東芝をめぐる状況も相当厳しいと、植木氏は言う。
「東芝はメディカルと半導体という収益源の2本柱を手放すことから、1部に復帰することは非常に困難といえる。シャープのように、強力な支援企業が現われれば話は別だが、今は銀行団が何とか破綻を免れる程度の支援をするにとどまっている。
2部に降格したのち、債務超過が翌年も続けば上場廃止です。しかも東芝株の場合、不正会計などで内部管理体制に不備があるとして『特設注意市場銘柄』に指定されていて、東証が改善されていないとみなすと、早ければ今年7月にも上場廃止となる可能性も残っている」
2軍落ちどころか強制引退の危機である。厳しい現状を東芝のOBはこう憂う。
「会社に残っている中年社員はいまだに『大東芝』の幻想から抜けられず、潰れるはずがないと思い込もうとしている。だから、逆に2部降格のようなショック療法をしたほうが、腹をくくってやれるのではないかと期待している……」
しかし、ショック療法に耐えうるだけの体力が東芝に残っているのかどうかはわからない。
※週刊ポスト2017年3月10日号