◆時価総額が低いカラクリ
これらは川村―中西ラインによる社内改革の成果だが、データなどを積み重ねて分析する理系出身トップは、世間の耳目を集めるキャッチフレーズなどを巧みに生み出す文系出身トップに比べ、地味に映る。そんな雰囲気もあってか、市場関係者の注目度は決して高いとはいえない。カブドットコム証券の山田勉・投資情報室長(マーケットアナリスト)の見方だ。
「日立に比べると、グループとしての層が薄かった東芝は、総合電機メーカーとして常に日立と比較されてきたから、『チャレンジ』なる言葉を駆使してまで無理をせざるを得なかった。もっとも日立は優良子会社が多いがゆえに、それを存分に活用しきれていないという見方が証券業界には多く、マーケットでの日立の評価はあまり高くないのが実状です」
実際、株式時価総額を見ると、日立は総合電機首位なのに、売上高も純利益も劣るソニーや三菱電機、パナソニックに及ばない。
「日立は、株価を上げることが最優先課題ではないように見えます。それよりも日立グループは、日本の基幹インフラである道路や発電などを手がけ、技術的に国を支える社会的責任が大きい。日本にとって不可欠な技術力を持つ企業であることを経営陣はもちろん、株主もわかっているのでしょう」(山田氏)
※週刊ポスト2017年3月17日号