◆トランプは習近平に頭を下げた
この過程を冷静に観察すると、トランプ大統領は、当初、拳を高く上げたが、中国側の強硬な対応に当惑して、「一つの中国原則」を認めると習近平の前で頭を下げ、関係正常化を求めたということだ。米国外交が弱くなったことが端的に示された。
われわれもこの現実を冷静に受け止める必要がある。2月の安倍晋三首相の訪米の成果として首相官邸と外務省が強く打ち出しているのが、尖閣諸島をトランプ大統領が日米の防衛の適用範囲と認めたことだ。
日米安全保障条約は、第5条で〈各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。〉と規定している。
尖閣諸島は、日本の施政の下にあるので、日米安保条約第5条の適用範囲になり、米国が日本と共同して防衛するというのは、当たり前のことだ。オバマ前大統領もこのことを認めていた。
首相官邸と外務省は、トランプ大統領が尖閣諸島を日米安保の適用範囲と再確認したことを大きな成果のように演出しているが、このこと自体にニュース性はない。当初から必ず確認できることが明白であった事柄をあえて成果のように見せる稚拙なプロパガンダ(宣伝)を外務省は行っている。