統一コリア内で南北のどちらが主導権を握るかは統一までの過程にもよるが、北朝鮮主導で統一が成されれば、外資などを誘致するために米国や日本との関係改善を重視する可能性がある。一方、慰安婦像の増設をしてきた韓国が統一すれば、日本の歴史認識をただすことに熱心な国家になる可能性が高い。

 いずれにせよ、核付きの朝鮮半島と中国が手を組めば、日本にとって相当な脅威となることは間違いない。

 そのとき、日本はまず、価値観をともにする米国との関係強化が必須である。その上で「国益を主張する日本」を鮮明にした外交が必要となる。

 たとえば、「非核三原則の遵守」を前面に押し出す必要はない。実際に核開発をせずとも、非核三原則を口にしなくなるだけで国際社会は「日本が核武装するかもしれない」と疑心暗鬼になり、抑止力になる。軍事費は不要だ。

 実現に長い時間がかかる核開発は現実的な選択肢ではない。むしろ通常兵器を強化すべきだ。空対地ミサイルや巡航ミサイル、弾道ミサイルの新規開発、空中給油機、情報収集衛星の増強など、使える兵器の強化を図るべきだ。

 朝鮮半島の核保有という「悪夢」の到来を前に、日本がなすべきことは多い。

●たけさだ・ひでし/1949年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、防衛省防衛研究所(旧・防衛庁防衛研修所)に教官として36年間勤務。その間、韓国延世大学に語学留学。米・スタンフォード大学、ジョージワシントン大学客員研究員、韓国中央大学国際関係学部客員教授を歴任。2011年、防衛研究所統括研究官を最後に防衛省を退職。その後、韓国延世大学国際学部教授等を経て現職。主著に『東アジア動乱』(角川学芸出版刊)、『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所刊)、『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか』(PHP研究所刊)などがある。

■取材・構成/池田道大(ジャーナリスト)

※SAPIO2017年4月号

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