また、もともと商品やウェブの開発などに携わる研究者や情報システム設計者、記者やデザイナー、証券アナリストや弁護士など一部の専門業務と、企業の本社における企画・立案・調査・分析などの企画業務は「裁量労働制」の対象で、残業規制の例外となっている。
さらに今回の議論では、しばらく前に話題となった、年収1075万円以上の高度専門職を対象に、労働時間ではなく成果に対して賃金を払うという「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」(残業代ゼロ制度)との整合性も、さっぱりわからない。
そもそも日本企業の場合、多くの“総合職”と呼ばれるビジネスマンは定型業務と非定型業務の両方を抱えていて、仕事が定型業務と非定型業務の“霜降り肉”状態になっている。そこが日本企業の最大の問題であり、まず定型業務を切り出し、それについては残業時間を規制すると同時に、可及的速やかに自動化していかねばならない。
ただし、飲食店やホテルなどのサービス業は別である。たとえば、牛丼店やハンバーガー店の従業員が自分の判断で非定型業務を行ない、客によって盛りや個数を多くしたり少なくしたりしたら困る。これは紛れもない定型業務だから、長時間労働やワン・オペレーション(従業員1人で全業務を切り盛りして営業すること)を厳しく規制し、きちんとした時間管理・人員管理を義務付けるのは当然だ。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号