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「桜」と「富士」 列車愛称でかつて人気二分も現在は明暗

富士急行が運行する「フジサン特急」。富士急には、「富士山駅」もある


 また、「さくらライナー」では吉野駅に到着・発車する際、車内チャイムに「さくらさくら」を流している。

 桜への意気込みは、車両だけではない。沿線の環境整備にも表れている。近鉄は”吉野線 華いっぱい計画”と称する吉野線沿線の景観づくりに取り組んでいる。これは吉野線沿線に花や木を植樹するプロジェクトで、昨年度から今年にかけて吉野線の福神駅付近で桜19本を植樹したほか、沿線全体ではアジサイやモミジ、ユキヤナギなど約1万7000本を植えたという。

 愛される桜に対して、富士山へ思い入れる鉄道会社は多くない。JRは「富士」の復活を果たせていない。富士周辺を地盤とする私鉄でも、「富士」の愛称を使った列車を運行していない。その中で、富士急行だけが孤軍奮闘している。富士山麓を走る富士急行は「富士ビュー特急」や「フジサン特急」を運行しているが、「桜(さくら)」が全国で走っていることを考えると「富士」の現状は寂しい。

 ともに特急列車のエース格として一世を風靡した「富士」と「桜」は、時代の趨勢とともに大きく明暗を分けた。2013(平成25)年、富士山は世界遺産に認定されて脚光を浴びた。鉄道の世界でも”富士”の巻き返しに期待したい。

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