その姿勢は、死の間際でも変わらなかった。前出の永井は今年1月、年始の挨拶に渡瀬を訪ねた際の様子をこう振り返る。
「入退院の繰り返しで、体調はかなり悪そうでした。それでも渡瀬さんは辛そうな表情や弱気なところは一切見せず、僕が近況を話すのをいつものようにニコニコしながら聞いてくださいました。それが渡瀬さんの強さであり、優しさだったんだと思います。これが最後の会話になりました」
〈やれんのう! わいらのやること、いちいちケチつけられたんじゃよう!〉
記念すべき『仁義なき戦い』第1作で、松方弘樹演じる若頭にこう啖呵を切った渡瀬。多くのファンの心に残る名シーンだ。いまごろ2か月先に旅立った松方相手に、天国でこんな切った張ったの演技をしているのかもしれない。
※週刊ポスト2017年4月7日号