「加齢性難聴」も、感音難聴の一種である。
「『老人性難聴』とも呼ばれ、誰にでも起こります。これは内耳で音を認識する『有毛細胞』の数が加齢とともに減少することが原因。50~60代で自覚するケースが多い。高い音や子音が聞こえづらくなり、『佐藤』と『加藤』、『洗う』と『笑う』などの聞き間違いが多くなります」(坂田院長)
他にも、工事現場やカラオケ店など大きな音がする環境で長年過ごしていると発症しやすい「騒音性難聴」や、ある日突然片側の耳が聞こえなくなる「突発性難聴」がある。
「『騒音性』は徐々に進行するため気づきにくく、自覚したときには深刻な状態に陥っていることが少なくありません。一方の『突発性』は原因不明。働き盛りの年代に多いですが、治癒率は低い」(済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科診療科長・新田清一氏)
中には、放置すると命にかかわる難聴もある。順天堂大学医学部付属練馬病院の角田篤信医師がいう。
「鼓膜の奥にある中耳に血管などから滲み出た液体が溜まる『滲出性中耳炎』です。伝音難聴のひとつで、非常にゆっくり進行し、痛みもないため自覚症状はほとんどありません。
この病気が恐ろしいのは、『上咽頭がん』に起因するケースがあるからです。滲出性中耳炎自体だけなら治療で完治してしまうのですが、その原因である上咽頭がんは発見しにくい。そのため、がんだけが治療されず放置され、気付いた頃には末期まで進行していた、ということも少なくないのです。
滲出性中耳炎は片耳の聴力が徐々に落ちるのが特徴なので、受話器をとる時には普段と逆の耳でとって、聴力を確認しましょう。もし片耳だけ聞こえにくく、かつ鼻をかんだときに血が混じっていたり、同じ側の耳の後ろにしこりが感じられたりする場合には、上咽頭がんの可能性が考えられるので、医師の診断を受けてください」