その後、他の新聞やテレビも一斉に「クロダ記者、国外追放も」と競って伝えた。となると入管も動かざるをえない。呼び出されて「申し訳ないが……」と恐縮(?)され、800万ウォン(約80万円)の科料に処せられた。
韓国マスコミの期待に反して国外追放(?)は免れたが、盧武鉉政権下の韓国マスコミの雰囲気を象徴するエピソードだ。今回の朴槿恵弾劾のロウソク・デモを最も扇動し、文在寅政権誕生をヨイショしているのが『ハンギョレ新聞』である。
保守の朴槿恵政権下でも名誉毀損で起訴があったのだから、左派政権となると敵対勢力には何でもありだろう。メディアでさえ、気に食わない外国人記者の国外追放を平気で扇動したのだから。
いや、盧武鉉政権の前の金大中政権でもこんなことがあった。人権と民主主義の英雄(!)でさえあったあの金大中大統領の下で、民主化闘士あがりの与党議員が国会の対政府質問で何と「産経新聞ソウル支局の閉鎖、追放」を主張したのだ。「新しい歴史教科書」の版元の扶桑社が産経新聞社系列だからケシカランというのだった。
【PROFILE】黒田勝弘●1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。
※SAPIO2017年5月号