高級ホテルと見まがうような休憩室


 大須陵苑側のエレベーターを上がる。参拝スペースは前述の小石川墓陵より一回り広いが、仕様の基本は同じだ。「墓石は黒御影石で、幅125cm、高さ170cmを誇ります」と住吉さんの説明を聞くが、私は自動搬送式のお墓訪問3軒目なので、申し訳ないが今ひとつ新鮮味を感じない。ところが、各フロアにある広々とした休憩室には驚きを隠せなかった。なんと、それぞれ「83畳」だそう。壁は大理石で、重厚なソファやテーブルが配され、高級ホテルのラウンジと遜色ない。

「お待ち合わせや、参拝後の休憩にゆったりとお使いいただけます。館内の豪華さ、日本一だと自負しています。名古屋には他にも自動搬送式のお墓が5、6か所ありますが、おかげさまで滑り出し好調です。ここ興安寺が、日本で初めて15年前に自動搬送式のお墓をつくったこともご案内しています」(住吉さん)

 興安寺は、もとは三河にあったが、天正18年(1590年)徳川家康の江戸開城に同行し、東京に移ったお寺だそうだ。

 その東京の興安寺がいち早く自動搬送式のお墓を考案し成功。「次は名古屋にお墓を」となったと見るのが自然だろう。

 余談ながら「お墓のビル」の建築に異を唱える地元の人もいたのではないか。そう思ったのは、今は葬儀会館から保育園に至るまで、その建設に際し、「迷惑施設」だからと拒む住民が少なくないと聞くからだ。近隣で聞き回ったが、浮かび上がってこなかったどころか、「去年まで古びたビルが建っていた場所。きれいになった」と一様に好意的だ。

 すぐ前のスーパーマーケットに来ていた女性たちに、私が館内を見てきたと言うと「どんなふうだったか」と質問攻めにあった。「お墓がぐるぐる動き続けているのか」(70代)、「古い墓石もセットできるのか」(50代)などと妙な問いも飛んできた。

 笑っちゃいけない。興味はあるが、情報が届いていない向きも少なからずいるのだ。

※女性セブン2017年4月20日号

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