「現在の医療が過剰だと感じている医師は相当数いますが、仕事としては検査するほど、薬を処方するほど儲かるから声をあげにくいのでしょう。それは患者のためにも医学のためにもなりません。我々はそんな現状と向き合うために『チュージング・ワイズリー(賢い選択)』を日本で広めたいと思っています」
七条診療所所長で佐賀大学医学部名誉教授の小泉俊三氏は、こう語る。チュージング・ワイズリーとは、2012年に米国の内科専門医認定機構(ABIM)財団が「不要かもしれない過剰な検診や、無駄であるばかりか有害な医療を啓発していこう」と呼びかけたキャンペーンだ。
その活動は拡大し、現在は全米74の医学・医療の専門学会が協力し、400以上の「無駄な医療」を指摘している。例えば、「前立腺肥大の検査をするのはほとんど無意味」、「心筋梗塞などの予防のための冠動脈CT検査は無駄」などだ。
この活動は今やカナダ、ドイツ、イタリアなど17か国に広がり昨年10月には日本でも『チュージング・ワイズリー・ジャパン(以下、CWJ)』が立ち上がった。発起人となった前出の小泉氏のほか、約20人の現役医師や医療専門家が名を連ねている。小泉氏が言う。
「医師にとって“食い扶持”が減るのを受け入れるのは簡単ではないですが、医療費の財政圧迫は世界的な問題です。手術や投薬ありきの医療に対する国民の不信も高まっている。医療の無駄を省くことが、21世紀に生きる医師と患者にとって避けては通れないと考える医療関係者が増えたことは、CWJ立ち上げの追い風になっています」
※週刊ポスト2017年4月21日号