本書が描くのは50年前から30年前の出来事だが、眼前で展開する臨場感溢れる同時進行ドキュメントのように感じる。前記の人物たちに加え、改革に協力した土光敏夫、瀬島龍三らの経済人、加藤寛らの学者、世論を動かした毎日新聞の内藤国夫、時事通信の屋山太郎ら大物新聞記者、事なかれ主義の国鉄総裁など多くの人物が登場し、〈策謀と裏切り、変節、保身、怨念など、さまざまな人間の情念〉が渦巻く群像劇にもなっている。
著者の時代の目撃者としての目、書き手としての構想力、筆力は素晴らしく、スケールの大きな傑作ドキュメントとなっている。
※SAPIO2017年5月号