役者としてのキャリアをスタートした頃はボクシングやバラエティ番組との掛けもちをこなし、現在は書画の世界でも実績を積み重ねるなど、絶えずいくつかのことを並行してきた。
「絵でもそうなんですが、画家としてアトリエにずっと籠っていると空気が重くなってきます。
ですから、ドラマをやったり、バラエティをやったり、旅番組でいろんな地方に行ったりして、ガス抜きをしているわけです。それでまたアトリエに入るから、常に新鮮な気持ちでいられます。
それから、ロケ先でいろんな風景を見たりしてそれをインプットすることで、『次はこれを描こう』というモチーフにも事欠かなくなる。演じる上でも、同じです。大事にしているのはモチーフです。決め手になるモチーフが一つあると腹が据わるし、ないとブレる。ですから、どの役でも必ず僕の中に一つ重石を置くようにしています」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
◆撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2017年4月21日号