古書店を舞台にしよう、この店がどういう状況ならおもしろいだろう、ドラマ的だろうと考えます。日常でもいい。開店準備、でも新規で古書店開店は難しいかな。現実的じゃないな。

 それから自分の体験や価値観に寄せるんです。古書店は雑然としているのがいいんだよね。だとすると、閉店だなと思ったんです。終わって整理しているか、もうすぐ閉店するか、そこを舞台にしよう。

 だとすると、誰がやっているんだろう。バイトの2人かな。なんで閉店するんだろう、店主が死んじゃったからかな。おじいちゃんがやっていて、お父さんの代になったけど、お父さんは実は興味がなかった…そうやって、どんどん広げていくんです」

 中学時代から落語好きだった。高校生の時に三遊亭圓えん丈じようの新作落語を見て、驚愕した。

「『グリコ少年』という演目をテレビでたまたま見たんです。最後に高座で着物を脱いで、ランニングと短パンになって、グリコのキャラメルを配りながら客席を走ってたんです。こんなことしていいのかって思いました。

 また新作のタイトルも『悲しみは埼玉に向けて』とか、今まで落語にこういうタイトルをつけなかったであろうというタイトルを平気でつける。新作落語に俄然興味が沸いたんです。とはいえ、自分が作った落語を後世に残したいとは、そんなに思いません。

 ぼくがやっているのは芸術ではなくて芸能です。目の前のお客さまに喜んでもらわなければ、しょうがないんです。今は、二ツ目の若いイケメン落語家やアニメ『落語心中』などの影響もあって、落語ブームといわれている。

 ブームはいずれ去りますから。そのときに、『今あの頃ほどの熱がないけど、映画に行こうか、ライブに行こうか、寄席もいいか』という選択肢の1つであってほしい。ぼくらの若い頃は、『寄席なんてありえねえし』だったんだけど、日常の楽しみになってほしい。そのためには、おもしろいことをしゃべる。それがいちばんです。おもしろいことをしゃべらなかったら、ダメなんです」

※女性セブン2017年4月27日号

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