日本では国立がん研究センターがIARCの研究の結果が日本人に当てはまるかを評価研究し、確実にアルコールの影響があるのは「肝臓がん」「大腸がん」「食道がん」で、肺がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がんなどは「データ不十分」としている。
「適量の飲酒」は百薬の長で死亡率を下げるのか、それとも、「酒は万病の元」で1滴も飲まない方が健康にいいのか、対立する2つの医学的根拠を突きつけられても、どちらが正しいのか判断に苦しむ。
興味深い比較評価がある。九州大学大学院予防医学分野の松尾恵太郎・教授は論文『がんリスクとしての飲酒習慣』(2014年)の中で、非飲酒者と飲酒量別のがん死亡率の研究を比較調査し、男性の場合、「適量飲酒」の方が非飲酒者よりがん死亡リスクが統計的に有意に下がっているとしてこう指摘している。
〈単純な飲酒の禁止が、良好な健康影響をもたらすわけではないという事を示唆すると言えよう〉
酒と健康をめぐる議論の決着はまだ先になりそうだ。
※週刊ポスト2017年4月28日号