経営危機に陥った東芝は決算発表を二度にわたって延期した末に、監査法人のお墨付きを得ないまま、2016年(4~12月期)決算を発表せざるを得なくなるという異常事態を迎えた。このままの状況が続けば東証二部落ちどころか、いよいよ上場廃止も現実味を帯びてくる。
東芝はすでに白物家電や医療機器の部門を売却し、子会社である米原子炉メーカー・ウエスチングハウス(WH)を連結から切り離して海外の原発事業から撤退する方針を決めている。さらに、主力の半導体事業を売却してインフラ事業に集中するという。もはや東芝再生は打つ手なしなのか。
「東芝本体を生き延ばせるという考えを捨てるべき」
そう語るのは、マイクロソフト日本法人社長を経て、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立した成毛眞氏だ。
「東芝の問題点は、総合重電、総合家電にこだわってきたことにあります。ずっと事業部門の出身者が経営トップを務め、自分が担当していた分野の感覚で東芝全体をマネジメントしてきた。重電の発想で半導体の投資計画を判断すれば、間違うのは必定です。
半導体だけ切り離し、“重電東芝”が生き延びる方針でいるようですが、今の時代、総合重電、総合家電というビジネスは成り立たなくなっている。グローバル企業は皆、一つの事業に集中する専業化の方向で進んでいます。特にハイテク産業は、そうでないと生き延びられない。
東芝は半導体を売却しても、制御事業やFA(ファクトリー・オートメーション)事業などいくつもの事業がある。そうした事業を個々に切り離して、独立もしくは売却する。それによって専業経営できるようになります。最後に東芝本体は清算すればいい」
歴史ある「大東芝」は姿を消すが、小回りの利く数多くの“小東芝”が生き延びればいいとする発想だ。
※週刊ポスト2017年5月5・12日号