業績の回復だけではない。トヨタは傘下にダイハツ、日野自動車を抱え、スバル(旧・富士重工)の筆頭株主にもなったが、グループ企業は自動車分野以外の多くの業種に広がる。子会社筆頭のデンソーは自動車部品では世界首位、社員約15万人の巨大企業のうえバイオや基礎化粧品まで手がけている。
商社部門の豊田通商はトーメンを吸収合併して総合商社業界6位となり、住宅部門のトヨタホームもミサワホームを吸収してハウスメーカー(住宅会社)8社の一角、金融部門のトヨタファイナンシャルサービスは世界30か国以上で事業を展開する。
そうした成長の秘密は創業者の佐吉が残した「一人一業」という家訓にある。「豊田家の盟主は、代々新しい事業をつくること」という意味だ。
この家訓から佐吉が興した自動織機会社から2世代目(息子)の喜一郎氏が自動車開発に乗りだし、3世代目(孫)で現トヨタ名誉会長の章一郎氏は住宅部門に進出して業容を拡大していった。4世代目(ひ孫)の章男氏は昨年、米シリコンバレーにAI技術開発のための「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・インク」(TRI)を開設し、5年間で1200億円を投じる計画だ。狙いは自動運転技術の開発にはとどまらない。