ライフ

【書評】香山リカ氏が知った沖縄の「現実」

【書評】『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』/上間陽子・著/太田出版/1700円+税

【評者】香山リカ(精神科医)

 温暖な気候、きれいな海、おいしい食べ物。誰もが大好きな沖縄だが、一方で「米軍基地の集中」や「全国でワースト1位の年収」など大きな問題を抱えている。本書はそんな沖縄の“夜の顔”を浮き彫りにした衝撃的な一冊だ。

 沖縄で生まれて暮らす、10代から20代の6人の女性が自分の物語を語る。そのほとんどが貧困、親の離婚などで“おとなのいない家庭”で子ども時代をすごし、そこから逃げるように非行グループに入り、彼氏の部屋に身を寄せ、10代で妊娠、出産。そしてお決まりのように彼氏の暴力にさらされてそこからも逃げ、水商売や風俗業に足を踏み入れる。

 その中のひとり、亜矢は中学2年のときに集団レイプされた経験を持つ。当時の恋人や親も事件を知ったが、結局、母親の反対により警察への被害届は出されず、亜矢は親に責められた。本来なら自分を守ってくれるはずの親が、レイプ被害を隠そうとしたのだ。

 どれほど絶望したか想像にかたくないが、亜矢は「開き直りが早い子だから、引きずらないね」と強気に振る舞い、その後も多くの男性と性体験を持つ。聞き手でもある著者は、それは「もう一度同じような場面を再現して、今度こそ、その恐怖に打ち勝とうとして行われる」、レイプ被害者にはよくある自己回復の行動だと解説する。

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン