人間が団結するときにいちばんいいのは、共通の敵を作ること。日本では小池百合子東京都知事(64才)がやっていますし、アメリカではトランプ大統領がやってますよね。トランプ大統領はすごいですよ。選挙のときはヒラリーさんで、当選後はメキシコとイスラム。そして今は北朝鮮。
中川:ネットの世界は顕著ですが、一般の世界でも、今って敵か味方かって決めて群れたがるでしょ? 竹内さん、ぼくはもう40才を過ぎて、誰かと群れたいとかもう思わないんですが、なんでみんな、こんなに群れたいんですか?
竹内:私も群れたくないですよ(苦笑)。
片田:これはパラノイア構造というんだけど、敵が自分たちを攻撃してくるかもしれないから、自分たちは団結しなくちゃいけないと。そういう見方しかできなくなってきていますよね。物事は多面的なのに、自分の都合のいい正義を振りかざす。寛容性もなくなり、敵だと認識したら徹底的に相手を打ちのめす。
中川:ツイッターだと匿名ですから、右か左か、極端な意見なんですよね。それでぼくがそこを指摘すると、両者がそろって、ぼくのことを「中立派を気取る冷笑系のバカ」と言われ、双方からたたかれる(笑い)。
日本人ってなんでも曖昧にしてきて、忖度ではありませんが、なあなあでやってきたのが美徳だったはずなのに、いつの間にか白黒はっきりつけたがるようになりましたよね。もちろんネットの普及がそうした面もあるといえますが。
片田:やっぱり根底には不安と恐怖があるんじゃないですかね。もしかしたら、この人は敵かもしれない。用心しないと、いつ自分が攻撃されるかわからない、だったらこっちから攻撃しかけよう、みたいなね。だからトランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作りたいのと同じように、みんな敵か味方に分けて壁を作りたがるんですよ。
竹内:動物行動学的には、敵か味方か分けることは、生命にかかわることですから、すごく大事なことで、群れることについてもそうですが、なぜそういった議論になるかなって思ってしまいました。
例えばえさを発見したスズメは、それが塊かたまりなのか、バラバラなのかによって仲間を呼ぶかどうかを判断します。塊であり、エサを独り占めできるときには仲間を呼ばず、抜け駆けし、バラバラになっていて独り占めにできないときは、仲間を呼んで防衛要員とするんです。誰とどう群れるかというのは、自分のリスクを減らすための保険とも考えられます。
※女性セブン2017年5月11・18日号