週休3日制は佐川急便以外に、すでにユニクロを運営するファーストリテイリングが転勤のない「地域正社員」を対象に導入している。同社も変形労働時間を活用し、1日10時間、週4日勤務と佐川急便と同じ仕組みだ。
ただし小売業なので休みは平日に取得することになっている。こちらも「『仕事と家庭を両立させたい』『オンもオフも充実させたい』そんな声にお応えして導入した」同社HP)という触れ込みだ。だが、日々子育てしている社員にとっては1日の労働時間が長くなる分、休みが1日増えることのメリットはあるのだろうか。
ヤフーは今年4月から家族の育児・介護をしている社員を対象に導入している。
同社の1日の労働時間は変わらず、休みが1日増える分、2割程度給与が減額される。こちらは1日5~6時間働く育児・介護の短時間勤務の週休版ともいえるもので、単純に短時間勤務か週休3日かという選択肢を増やしたにすぎないともいえる。果たして今後どれだけの数の社員が選択するのか興味深いところである。
ではこの週休3日制の仕組みが他の業種・職種にまで広がるかといえば難しいだろう。たとえば製造業。すでに24時間フル稼働の工場では休息時間に配慮しながら昼夜3交代のシフトを組んでいる。そこで丸々1日休みを増やすとしたら、さらに休息時間を切りつめるか、増員は避けられないだろう。
営業職も難しい。法人や個人の顧客対応の社員は相手の都合によって残業が日常茶飯事の世界だ。しかも個人ごとに担当顧客を抱えていると、定時を過ぎても対応せざるをえない場合も多い。じつは月末金曜日の午後3時の早帰りを奨励するプレミアムフライデーでは多くの企業が実施を見送った。最大の理由は顧客への対応だ。
ある医療機器メーカーの人事部長は、
「土日は病院が休みになるので金曜日は検査機器類の納入で忙しくなる。営業職の社員が午後3時に帰れば、顧客対応ができないためにビジネスの損失が大きい。普通の日でもライバル社としのぎを削っており、定時以降は対応できませんとなると顧客を奪われてしまう」
と指摘する。仮に週休3日制になり、顧客に「明日は休みなので来られません」と言おうものなら「あっ、そう。じゃうちに来なくてもいいよ」と言われかねない。もちろん顧客やライバル企業も週休3日ならいいが、自社だけ導入してもビジネス上の損失は免れないだろう。
ビジネス上の損失以外に、週休3日制で危惧されるのが長時間労働だ。