日々のニュースで小さく報じられる事件には、大きな問題の一端がのぞいていることがある。地方選挙で起きた知的障害者をめぐる小事件から、評論家の呉智英氏が、国民の権利の根拠について考えた。
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地方の首長選挙でちょっとした小事件が起きた。地方選で、しかも小事件。しかし、私にはこれはきわめて大きな問題の露頭のように思える。
6月11日付朝日新聞は「知的障害の男性投票できず」「選管、不備認め謝罪」と見出しして、次のように報じている。
4月23日、岐阜県各務原市の市長選挙があった。その二日前「重度の知的障害のある男性」が母親に伴われて期日前投票所を訪れ、「代理投票を申し出た」が投票できなかった。「男性の入場券の裏面の『宣誓書』が未記入だったため、受付の男性職員が口頭で本人確認を求めた。母親は『本人は生年月日、住所が言えない』と伝えたが、再び口頭での確認を求められた」「職員は、本人確認できる療育手帳などの提示を求めなかった」