梅干しが現在のように庶民の食卓に並ぶようになったのは江戸時代。奈良時代には梅は果実として食され、平安時代に書かれた日本最古の医学書『医心方』では“梅干し”の効用に触れている。
戦国時代の武士は梅干しの果肉と米粉、氷砂糖の粉末を練った「梅干丸」を携帯していたという。江戸時代になって梅干しを食べる習慣が庶民の間に定着し、特に紀州産の梅干しは「田辺印」ブランドとして人気を博した。
梅干しの効能は計り知れない。その強力な殺菌効果をはじめ、梅酢ポリフェノールには抗インフルエンザウイルス効果があることがわかっており、クエン酸には疲労回復効果やカルシウム吸収促進効果も。高温多湿の日本の夏には不可欠な保存食である。
家庭料理研究家の松田美智子さんはこう話す。
「梅干しは95年の歴史をもつ梅農家『月向農園』のものを取り寄せています。大事に育てられた健康な梅は、梅干しになっても当然おいしい。ただ、保存食とはいえ開封と同時に風味は落ち始めますから、料理などにも積極的にお使いになって、梅干しの効能を存分に享受することをおすすめします」
【梅干しの保存法】
塩分18%以上の昔ながらの梅干しであれば常温で保存可能(ただし開封後は密閉容器へ)。しかし、塩分がそれ以下のものは、未開封でも冷蔵庫で保管を。梅干しは腐らない…と思われがちだが、減塩傾向にある昨今の梅干しは、保管状態によって白カビが発生することもある。取り分ける際は直箸を避けること。
また、梅干しの種は捨てずに、瓶などに入れて取っておこう。煮ものや炒めものに加えると、減塩できる上に、料理にコクと風味がプラスされる。
◆梅干しの炒めものレシピ
【1】豚ヒレ肉150gは7mmの棒状に切る。しょうゆ・酒各大さじ1、しょうが汁大さじ1/2、白こしょう大さじ2を絡める。
【2】中華鍋ににんにくのみじん切り小さじ1/2、ごま油大さじ2を入れて香りが立つまで熱し、粗みじん切りにした梅干しの果肉2個分を加えて、白っぽくなるまでさらに炒める。【1】を加えて火が通るまで炒め、水溶き片栗粉大さじ1を回し入れて余分な水分をまとめる。
【3】斜め薄切りにした青ねぎ6本分を入れてさっと炒め、こしょう適量をふって出来上がり。
撮影/鍋島徳恭
※女性セブン2017年7月13日号