「1997年に留学先のカナダから帰国した際、日本では筋トレがブームになっていましたが、実際にどの程度の運動をすれば病気を予防できるかという客観的な指標がほとんどなかった。そこで大規模な疫学調査を自力で始めようと考えました」(青柳氏)
試験的に始まった中之条研究はスタートから17年が過ぎ、世界中の研究者から注目を集めている。
同研究では中之条町で暮らす65歳以上の全住民5000人を対象に、運動や身体活動の状況、食生活、睡眠時間、病気の有無などを聞く詳細なアンケート調査を年に1回行なって、健康状態を綿密に調べる。
「こうした疫学研究で最も大切なのは、なるべく多くのデータを集めることです。中之条は私の生まれ故郷で縁者が多く、協力をお願いしやすかった。通常の研究におけるアンケートは郵送で回答率が低く、健康維持に意欲的な人の意見が集まりやすいなどのバイアスが生じますが、中之条では町役場の人が1枚ずつ住人に手渡しており、99%という驚異的な回収率を誇っています」(青柳氏)
回答者のうち2000人に詳細な血液検査や遺伝子解析を実施。また、全体の1割にあたる500人には、調査のカギとなる「身体活動量計」を着用してもらう。
身体活動量計はもともとクジラやイルカなどの生態研究に使われた装置で、加速度センサーを内蔵。「歩数」だけでなく、運動の「強度」まで測定できる。