普段の山本容疑者は礼儀正しい好青年という印象だったと話す関係者もいるが、怒りにまかせて暴走してしまう性癖は、格闘技を身につけ、人に教える立場になっても修正されなかったようだ。総合格闘家といえば、酔っ払いに絡まれ殴られてもそのままに耐えた桜井速人のような選手もいるが、山本容疑者が起こした事件ように、暴力に訴えてすごむイメージが根強い。なぜ、そのような悪印象がついてまわるのか。
「選手から恐喝や強要などの逮捕者が続いたことがあった影響もありますが、独特の社会性のなさが見抜かれているからでしょう。総合格闘技とは、格闘技の素朴な良さを蘇らそうとして生まれたものです。そのため技術の体系化を拒み、更新がとても早い。そして、試合に勝つか、金儲けさえすればいいという価値観が蔓延してしまった。人前でどんなにきれい事を並べても、そういう根本の考え方が伝わって悪印象に繋がっているんだと思います。地に足がついた選手や指導者もいますが、残念ながら少数派です」(前出の格闘技ライター)
いま関係者がもっとも恐れているのは、今回の反社会的な行為の結果、総合格闘技が再び日陰の存在に追いやられることだ。
「格闘技イベント『RIZIN』の地上波テレビ中継が継続されるかどうか、微妙な時期だというのに、なんてことをしてくれたんだというのが本音です。山本はRIZINに係わる選手ではありませんが、社長が交代して人事異動が行われたばかりのフジテレビにとっては、同じ総合格闘技だととらえられかねない。いきなり中継打ち切りはないだろうけれど、地上波からBSへ移動、なんてことにならないといいと思いながら事態を見守っています」(前出のスポーツ紙格闘技担当)
今回の事件について、どのように責任をとり、防止策を整えるのか。当事者だけでなく、総合格闘技全体のが、社会の中で受け入れられるための姿勢を問われている。