◆スケープゴートにされる日本人
この「スパイ防止・反特務情報連絡員制度」については、今年の5月24日付「中国国防報」が1面トップで掲載した署名記事で詳しく触れている。記事は「実体の保護だけでなく効能的な保護への転換─地上の施設だけでなく海や空、さらにインターネット上の領域への拡大展開─軍事施設:多面的で、立体的な保護姿勢を形成せよ」との長い見出しがついているが、要点は、これまでの目に見える軍事施設だけでなく、これからは海上や空中、あるいはネット空間における包括的な軍事情報の保護が必要だと訴えたものだ。
記事は冒頭、2015年5月に日本人男性がスパイ容疑で逮捕された浙江省の海軍や中国海警の基地がある舟山警備区では、軍民が協力しての軍事施設保護活動やスパイ摘発の先進地域であると強調。「スパイ防止・反特務情報連絡員制度」の模範地区であることを示唆している。
同制度が創設されたのは、中国内では近年、軍艦や潜水艦、戦闘機などが盗撮される事件が多発しているためだ。中央軍事委は昨年3月の「中国軍事施設保護法」(1990年施行)の改正案公表後、同委の国防動員部が主導する形で、中国全土の軍事施設や関連施設が存在する自治体組織の内部に「軍事保護委員会」を創設し、同連絡員制度を設置したという。