軍事情報に詳しい北京の外交筋によると、すでに、連絡員制度は90%の都市に設置済みで、その発足式には軍事委国防動員部の係官が出席し、「1894年に勃発した日清戦争では、日本のスパイが盗んだ軍事機密によって清軍が敗れる原因の一つにもなった」などとの具体例を提示。いまも、中国初の国産空母が盗撮されて、日本のメディアに掲載されたことや日本の民間人が旅行を装って軍事情報を収集しているとして、「軍事機密保持のために、人民戦争に乗り出さなければならない。とくに日本人への軍事機密漏えいには警戒しなければならない」などと強調しているという。
注目すべきは連絡委員制度など軍事機密保護や日本人など外国人スパイの摘発が強化されたのが、2012年11月の習近平政権の発足後であり、それ以降の5年足らずで、軍事施設保護法の改正のほか、反スパイ法や反テロ法、国家安全法などの軍事情報を含む機密情報の保護やスパイ摘発、治安維持に関する法令が軒並み制定されたことだ。
「これは、習近平が最高指導者に就任後、最初に行ったことが腐敗摘発と軍事力強化の二つだったことと密接に関連しており、双方とも自身の権力基盤強化につながっている。特に後者においては、2012年は尖閣諸島問題で日中関係が大荒れになったことからも分かるように、日本が党内の権力闘争に利用されており、その後、12人もの日本人がスパイ容疑などで拘束されているのも、その流れから考えれば納得できる。今後も日本人がスケープゴートにされる可能性は否定できない」と同筋は結論づけている。
●文/相馬勝(ジャーナリスト)
※SAPIO2017年8月号