◆空気かき回しの達人
こんなことがまかり通る社会は他のところまでおかしくなるもの、とぼくは思っている。
最近心配なのは、教育の現場でも奇妙な事件が多くなっていることだ。先生が中心になって特定の子どもをいじめたりするのが、それ。以前は子ども同士のいじめ問題が中心で、先生は何故その事実に気づかなかったのかと責められることが多かった。それが、近頃では先生がいじめの中心人物だったりする。
部活などの過剰な体罰も明らかに指導の域ではないのが動画などから見て取れる。そんな学校で教育を受ける子どもたちは校内の空気や教師の顔色を気にして、しなくていい忖度ばかりをするようになるだろう。
では、どうすればこういう奇妙な空気を一掃できるのか? ぼくはとにもかくにも思いっきり空気をかき回すことが一番だと思う。おかしなことにはおかしいと言い、誰かのご意向に沿おうなんて思わないことだ。そうすると、だんだんと風通しが良くなって、暮らしやすい社会になっていく。いま、国民がウンザリしているごまかしや屁理屈は淘汰されていくものだ。
最近あちこちのメディアで注目されている東京新聞の女性記者・望月衣塑子さん、ぼくは“空気かき回しの達人”だと思っている。ほかの記者が聞かない質問をくりかえし、場の横並び空気に支配されない。でも、菅官房長官との丁々発止は確実に他の記者たちも活性化させている。納得できない答弁にはしつこく食い下がる記者が増えてきた、と望月さん自身も何かのインタビューで話していた。
特定個人の利益のためや自らの保身のために忖度するのではなく、自分が何をなすべきか、きちんと足下が見えていれば当たり前の行動だが、こんなことがいま社会全体に問われているように思う。
おかしな忖度バカばかりがはびこるディストピアだけはゴメンこうむりたい。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。2017年8月23日(水)、小学館カルチャーライブ!にて講演会『「忖度バカ」はいらない!』を開催予定(https://sho-cul.com/courses/detail/27)。