その居酒屋が、世界初のカーボン製羽釜のデビューの場所となった。以来、カーボン製羽釜の性能の高さは、次第に周囲に知られるようになり、穴織カーボンに転機が訪れる。2004年、炊飯器の内釜づくりの依頼が大手家電メーカーから届いたのだ。2年半にわたる共同開発を経て、世界初のカーボン製内釜づくりに成功する。2006年に業界の常識を覆し、ヒット商品となった、10万円超えの高級炊飯ジャー、三菱電機『本炭釜KAMADO』の誕生だ。
その後、内釜の製造でヒット商品を支えるが、コスト面の課題から、製造が中国へ移管されることとなる。高価な原料在庫を抱えた同社は、再び窮地に陥った。そこで起死回生の一手として、踏み切ったのが自社製の調理器具づくりだった。工業製品づくりで培った高い技術力とデザイン性を徹底的に追求する開発力で、ついに『アナオリ カーボンポット』を生み出したのだ。
同製品は、今年、世界で最も権威があるデザイン賞といわれているiF Design Award2017とred dot design award2017をダブル受賞。シンプルなフォルムと、カーボングラファイトという、これまで調理器具に使われてこなかった素材を活用した革新的な機能が世界的に評価されたのだ。この鍋は、熱伝導率はアルミ鍋に、遠赤外線効果は土鍋に匹敵し、比重は鋳物ホーローの4分の1。炊飯だけでなく、煮る、蒸す、焼く、炒めるといった調理でもその威力を発揮。洋食屋のシェフも、ハンバーグの、まるでオーブンで調理したようなふっくらとした焼き上がりに驚いたという。
町工場の意地が生み出した究極の多目的調理器具。これを使えば料理が楽しくなること間違いナシ!
※女性セブン2017年8月10日号