ライフ

【書評】香山リカ氏も感心する「悪」の働きの抑え方

【書評】『悪の正体 修羅場からのサバイバル護身論』/佐藤優・著/朝日新書/780円+税

【評者】香山リカ(精神科医)

 現代社会を生き延びるためには、「悪魔」の存在に敏感にならなければならない。本書の著者は繰り返しそう言う。「悪魔? なんだオカルトの世界の話か」と思ってはいけない。著者が言う「悪魔」とは「悪が人格化したもの」であり、それは今も存在する。それどころか「権力とカネをめぐる腐敗の構造、すなわち悪の構造は、時代を経ても変わらない」中、「悪魔」は今ますますその動きを活発化させているようだ。

 もちろん、私たちのような小人物がいきなり「悪魔」になるわけではないようだが、著者によると、悪は誰の中にも潜んでおり、いったん悪にとり憑かれると「個人的な活動の限界も、個人的な責任の限界も越える」という性質がある。たしかに「どうしてあの人が」というような善良そうな人が、ある状況や組織の中に置かれると、あっと驚くような不正や悪事を働いてしまう例も少なくない。

 では、私たちはどうやって「悪魔」から身を守り、自らもそうならないようにすればよいのか。著者は聖書や神学書、『闇金ウシジマくん』などのマンガや小説までを縦横無尽に引きながら、この世の中にある悪に対して感度を上げていくためのコツを教えてくれる。

「悪魔のささやきに反応するかしないかは人間次第」「受けるよりは与える方が幸い」「生き残るために、弁論や議論の技術を磨く」「他人を手段として使わず、誠実につきあう」「直観というふしぎな力を働かせる」「斜めから見たり、裏返したりしてみる」

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン