軟式野球部に所属する男子部員は、3年生と1年生が3人ずつ。2年生は11人いるが、3学年あわせても17人(そのうちの1人は幽霊部員)しかいないのだ。高校の生徒数は3学年あわせても160人ほどで、新たな新入部員は見込めない。PL学園中学の軟式野球部も部員不足は深刻で、来春の高校入学後も軟式野球を続ける意思のある選手はわずか2名だという。現在の2年生が引退する来夏以降、軟式野球部は単独チームでは試合ができない状況に陥るかもしれないのである。斉藤監督が嘆息する。
「去年のチームも新チームの頃は部員不足が心配された。もし部員不足となれば、連合チームになることも考えられるでしょう」
8月1日には、PL教団にとって1年で最も重要な教祖祭PL花火芸術が行われた。大幅に減少しているとはいえ、全国から信者が集まるこの神事に、軟式野球部員も参加した。
そして翌日の早朝は、花火会場となるゴルフ場を練り歩き、花火の残骸を拾って集めた。信者の間で「ガラ拾い」と呼ばれるこの奉仕活動は、かつて硬式野球部の部員たちにとっては屈辱的なことだった。なぜなら、甲子園に出場すれば免除となるからだ。「ガラ拾い参加」は即ち、「甲子園の夢が絶たれたこと」を意味するのである。
軟式野球部員たちにとって、今年の8月2日は準決勝を翌日に控えた大事な時期だった。それでも部員たちは、早朝5時に起きて、ガラ拾いに参加し、9時には練習を開始したという。主将の古市粘(ふるいち・つくる)が言う。
「ガラ拾いしたことによって、徳を積むことができ、勝利に導かれたと思います。大阪大会を勝ち抜けたことは、選手、周囲の方々のしきり(祈り)のおかげ。硬式がなくなったことで、自分ら軟式野球部に期待してくださっている。硬式野球部の分まで頑張ろうと思っています」
同じユニフォームを着ていても、あの名門野球部とは似て非なるPL野球がそこにあった。