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2017.08.11 07:00  マネーポストWEB

山岳遭難時の救助費用はいくらかかる? 手がかりないと膨大に

環境省は軽装での登山者にも注意を呼びかけている


 8月11日は「山の日」。国土交通省によれば、平成28年の山岳遭難事故の発生件数は2495件、遭難者数は2929人。10年前、平成18年の発生件数は1417件、遭難者数は1853人で、それぞれ1.76倍、1.58倍にもなる計算だ。

 登山計画の作成や滑落・転落防止のための装備、道迷い防止として地図、コンパス等を有効に活用して、常に自分の位置を確認することが大切だが、外部から登山者の行動を把握しようという試みもある。8月8日に博報堂アイ・スタジオは、長距離無線の LPWAによる独自の登山インフラにより、登山者の行動データを家族や関係者がパソコンやアプリで確認できるシステム『TREK TRACK』を8月18日から開始すると発表した。同システムを手掛けたクリエイティブ責任者の笹垣洋介氏は、次のように語る。

「遭難したとき、おおよその位置を把握しているだけでも救助費用はかなり押さえられます。『TREK TRACK』は数分おきに登山者の位置情報をサーバーに送るので、最後に確認できた位置だけでも関係者が救助隊に伝えることができます」

◆公的機関か民間かによって無料か有料か分かれる

 実際に山岳救助が必要となった場合、多額の費用が必要となる。山岳保険でどこまでカバーできるのか。

「山岳保険には、単発タイプ、年間タイプとあり、費用やカバーする範囲はそれぞれですが、捜索・救助費用をカバーするのは、年間タイプ、数千円の保険料で300万円くらいといったところです。

 例えば日本費用補償少額短期保険の『レスキュー費用保険』はレスキューに特化した保険で、年間4000円で、捜索・救助にかかる費用を300万円までまかなってくれます。日本山岳救助機構会員であれば、入会費2000円+年会費2000円で、捜索・救助費用実費を1会員1会員期間あたり330万円を限度に補填してくれます」(笹垣氏)

 国内のヘリコプターレスキューは、警察、消防、自衛隊、民間ヘリ会社によって行なわれている。警察、消防、自衛隊のヘリは無料だが、民間ヘリは当然有料。救助費用は遭難者が負担することになる。

 日本山岳救助機構合同会社のサイトによれば、民間ヘリの東邦航空の場合、捜索・救助料金は1時間あたり46万5000円。遭難現場が明確にわかっていれば、救助が1時間前後で完了するとして、費用は50万~80万円ぐらい。しかし、行方不明などで広く捜索しなければならないときは時間もかかり、費用もかさむという。

 公的機関か民間かによって無料か有料か分かれるが、どのヘリが救助に向かうのかは、「機体のスケジュールや事故現場の状況などを考慮して決められ、救助の要請者は、使用するヘリを指定することはできない」(日本山岳救助機構合同会社)という。

 公的機関の人員以外に、民間も含めて大規模な捜索・救助活動が行われた時には、人件費や日当のほか、その人たちの装備費・保険料・交通費・食糧費も払わなくてはならない。

「警察のヘリや防災ヘリの費用は、そこに住んでいる人の税金から払われますが、最近は県外から来た登山者のために…というわけで、有料化の議論もなされているところです。

 保険でカバーしている金額が目安になりますが、ヘリはチャーター費用が“1分1万円”と言われ、捜索・救助費用総額は100万~300万円とも。もちろん飛ばしている時間や日数などによって大きく変わってきます」(笹垣氏)

◆少しでも自分の情報を「残して」おくことが大切

 捜索・救助がスムーズに行くかどうかは、登山者の“情報”がどれだけ明らかにされているかによるという。

「以前、『TREK TRACK』の実証実験で冬山に行ったとき、偶然、僕たちがいる場所とは別の谷で遭難事故があったんです。救助の人は、『何の手がかりも残していかない人は困る』と話していました。どこを目指していたのかという計画や、直近どこで誰と話していたか、どんな様子だったかなどの情報は少しでも欲しい。例えば登山者の車だけが残されていて、その後誰ともコミュニケーションもないというような場合、どこを探したらよいかわからず、山全体をしらみつぶしに捜索するしかない。

 とはいえ助けにいくほうも命がけです。本当に手がかりが何もないときは、占い師に、どのあたりにいそうか聞くほどだそうです。登山者の位置がしぼられていると、捜索・救助コストが抑えられます」

 笹垣氏は、日本人には「どうせやるなら上を目指そう」「せっかくここまで来たのだから」など、“もったいないと思って頑張る精神”があるのが危ないという。山に登るときには入念な登山計画書と最新の装備、そして保険も忘れないようにしたい。

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