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コラム

2017.08.12 11:00  介護 ポストセブン

ビタミンD不足で骨粗しょう症や認知症、うつ病のリスクも

日差しを避けすぎるのもキケン(写真/アフロ)

 色の白いは七難隠す、というが、外出時に日射しを避けるあまり、日焼け止め、日傘はもちろん、サングラスに手袋まで、完全防備で出かける女性も少なくない。

 たしかに、日焼けはシミ・しわなど肌老化の原因になり、紫外線には皮膚がんや白内障の発症リスクがあるといわれるが、紫外線を避けすぎるのも実は体によくないのだ。

◆過度の紫外線カットは、健康を害する可能性が

 7月、20代の女性を対象に、週3回以上、日焼け止めを使用した場合の、血中のビタミンD濃度を調査したところ、常に欠乏状態にあるという結果が、大阪樟蔭女子大学などの研究チームによって発表され、注目を集めた。

 実際、過度な紫外線カットは、健康を害する可能性があると、健康院クリニック院長の細井孝之さんも言う。

「今年3月、日本内分泌学会がビタミンDに関するガイドラインを出しましたが、それによると、血中のビタミンD濃度が1mlあたり30ng以下になると不足状態にある、と考えられています。

 今までの患者を診る限り、現代の日本女性で基準値の30ng以上ある人は、おそらく1~2割程度しかいないのではないでしょうか」(細井さん)

 そもそもビタミンDは、脂溶性ビタミンの1種で、食べ物でも摂れるが、日光を浴びることにより、体内で作ることもできる。紫外線のUVBが、皮膚下にあるコレステロールからできる物質に当たるとビタミンDとなり、血管を通じて肝臓に運ばれる。

 また食べ物などで口から摂取したビタミンDは、小腸を経て肝臓と腎臓で活性型ビタミンDへと変化して、骨を作るなど、体内でさまざまな働きをしている。

◆骨作りをサポートし骨粗しょう症予防に必須

 ビタミンDは、骨の生成に深くかかわっている。骨を作る材料は、カルシウムとリンだが、ビタミンDはこれらが腸管から入ってくるのをサポートし、しっかり吸着させる役割を担っている。

 そのため、ビタミンDが不足すると、丈夫な骨が作られず、大人なら「骨軟化症」、子供なら「くる病」の要因になる。

「骨が弱くなるというと、骨粗しょう症を思い浮かべますが、これは骨密度が低下して骨全体が脆くなっている状態をいいます。骨軟化症は、カルシウムが骨として定着せず、やわらかい組織が増えている状態です。どちらもビタミンD不足により発症リスクが高まるため、予防にも治療にも、ビタミンDが必要となるのです」(細井さん、以下同)

 また、ビタミンDには、血液中のカルシウム濃度の調整、という役割もある。ビタミンDが不足すると、その調整がうまくできず、カルシウムの吸収も悪くなる。

 すると、その状態を副甲状腺が“カルシウム不足”と判断して、血中のカルシウム濃度を高めるために副甲状腺ホルモンを出してしまう。これが続くと副甲状腺機能亢進症になり、その結果、骨が溶けてカルシウムが血管に移動し、動脈硬化のリスクが高まってしまう。

 さらに、ビタミンDは、筋肉の収縮や神経の伝達にもかかわっており、筋力を高める効果や、転倒による骨折の予防になるため、高齢者に必須のビタミンともいえる。

◆抗菌ペプチドを増やし、インフルエンザ発症を予防する

 最近の研究では、抗菌ペプチドの生成に、ビタミンDが重要な役割を果たしていることがわかってきた。

 抗菌ペプチドというのは、皮膚、気道、腸管などの粘膜にある天然の抗菌物質で、細菌やウイルス感染から体を守る働きをしている。そのため、この生成に重要な役割を果たしているビタミンDは、風邪やインフルエンザの予防効果が期待できるという。

 東京慈恵医科大学の実験では、ビタミンDのサプリメント服用で、インフルエンザの発症率が半分近くに下ったという報告もある。

◆腸管の粘膜を丈夫にし体調を整える

 ビタミンDは、腸粘膜を丈夫にするので、不足すると、小腸粘膜の細胞と細胞の結合がゆるみ、リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)を引き起こすことがある。

 慢性的なストレスや生成された糖質などの摂取、または、咀嚼不足や食べすぎ、低胃酸による消化不足、栄養素不足などが原因で、腸粘膜が損傷を受けると、透過性の大きい腸、つまり漏れやすい腸になってしまうというのだ。

 その結果、本来通過しないはずの菌などが血液中に漏れ、精神症状やアレルギー症状、便秘、片頭痛などの症状が出たり、大切な栄養や薬の吸収が低下する原因にもなる。

 ビタミンDの充足は、器官としての腸や腸内フローラを整えることが期待されているため、腸内環境の悪化によって起こるこれらの不調の改善にも効果がある。

 他にも、ビタミンDはリンパ球など、免疫細胞のバランスを整える作用もある。これが崩れると、異常な免疫反応を起こして花粉症やアトピー性皮膚炎、ぜんそく、リウマチなどを引き起こすため、ビタミンDの充足は、アレルギー症状の予防・改善にも期待されている。

◆うつ病など、メンタル症状にも効く

 疲れが残るといった軽めの不定愁訴から、うつ病などのメンタル疾患にも、ビタミンDが大きく関係していると、山口病院精神科部長の奥平智之さんは言う。

 紫外線を浴びることが少なくなる冬に、うつ症状や不定愁訴を訴える人がいるが、ビタミンDの積極的な摂取をすすめると、改善に向かう人が多いというのだ。

「300人の統合失調症や躁うつ病患者の、ビタミンD〈25(OH)D〉の血中濃度を調べたところ、基準値である30nd/ml以上ある人は、全体の14%だったという調査報告があります。実際、患者さんに紫外線を浴びたり、魚などの食事やサプリメントを摂取してもらうと、症状が改善する人もいます」(奥平さん)

◆がんなどの予防も期待できる

 ビタミンDを増やすのに、最も効率がよいのは、紫外線を浴びること。だが、日本機能性医学研究所所長の斎藤糧三さんによると、20代に比べて、60才を過ぎた人の皮膚でのビタミンD生成力は著しく落ち、人によっては10%以下しかないこともあるという。

「日本人が1年で皮膚がんになるのは、10万人のうち11~12人、亡くなるのは1人といわれています。がん全体でいうと、10万人のうち男性350人、女性230人が罹患しています。皮膚がんになるリスクも心配ですが、ビタミンDを生成して、罹患率の高いがんの発症リスクを下げる方が、重要です」(斎藤さん・以下同)

 ビタミンDは、細胞膜に遮られることなく、中心にある核に直接働きかけ、正常な細胞分化を誘導する。

「体内の細胞は、常に生まれ変わっていますが、ビタミンDが充足していれば、体中の細胞分化が正常に行われるため、健康がキープできます。逆に、不足すれば、細胞が異常分化する可能性が高まり、がんなどの病気にかかりやすくなるのです」

 結腸直腸がん、前立腺がん、乳がんなどを予防する可能性があるという報告もあり今後の研究に期待が高まっている。

◆認知症にも関連している

 ビタミンDが不足した高齢者は、アルツハイマー病などの認知症になりやすい、という研究結果が、アメリカやイギリス、オーストラリアの研究者により、次々に発表されている。ビタミンDは、脳内で神経細胞の保護や増殖、分化調整の働きを担っているため、認知機能の改善にも働くと考えられているのだ。

 糖尿病との関連を示す研究結果も多い。国立がん研究センターの予防研究グループによる『多目的コホート研究』では、ビタミンDとカルシウムの摂取量が高いと、糖尿病のリスクが低くなったという。

 高血圧になる原因の1つに、腎臓で作られるホルモン「レニン」の分泌上昇があるが、ビタミンDにはこれを抑える作用があるため、血圧安定効果も期待できる。

 このように、生活習慣病といわれるさまざまな症状の予防・改善に、ビタミンDは活躍しているのだ。

※女性セブン2017年8月17日号

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