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2017.08.18 11:00  介護 ポストセブン

84才、一人暮らし。ああ、快適なり<第3回 自由って何だろう>

自由でいるために、矢崎氏が心がけていることとは? オーベルジュ・コヤマ(大分県久住高原)にて撮影

 ジャーナリズムに旋風を巻き起こした雑誌『話の特集』を創刊し、その後30年にわたり編集長を務めた矢崎泰久氏。雑誌のみならず、映画、テレビ、ラジオのプロデューサーとしても手腕を発揮、世に問題を提起し続ける伝説の人でもある。

 齢、84。歳を重ねてなお、そのスピリッツは健在。執筆、講演活動を精力的に続けている。ここ数年は、自ら望み、一人で暮らしている。そのライフスタイル、人生観などを矢崎氏に寄稿していただき、シリーズ連載でお伝えする。

 今回のテーマは「自由」。矢崎氏が求める自由とは?

 悠々自適独居生活の極意ここにあり。 

  * * *

◆「今日も元気だ煙草がうまい」

 私が一人暮らしをしていると知ると、「自由でいいですねぇ」と羨む人が少なくない。

「おいおい簡単に自由なんて言ってくれるなよ」と思うが、いちいち説明するのも面倒なので軽く頷くことにしている。
 
 だいたい「自由とは何か」について述べるとなると、一冊の本を書いても解決できない。それほどの難問だと私は思っている。例えばこんな風に定義することは出来る。

「自由って、喫いたいと思った時に、煙草に火をつけられることだ」
 
 今の東京で生活してると、この程度のことも不可能なのだ。煙草のみにとっては、実に生きづらい。私が一人暮らしに踏み切った理由のひとつに、朝の一服が重要な要素だったからだ。ウマイ時とマズイ時とがあって、それは体調の良し悪しに繋がっている。

「今日も元気だ煙草がうまい」という煙草のCMが流行ったが、まったくその通りである。老いてくると、ますますそのことがわかる。

 都会に住む現代人が自由を満喫するなんて絶対にあり得ない。たいてい何かと当たってしまう。静かな環境なんて望外である。公園のベンチに座って読書していても、制服の二人組がやってきて、当然のように誰何(すいか)されたりもする。都会で長居は無用なのだ。

 ちなみに私の「自由な(ように見える)一日」をご披露してみよう。

 ある日曜日、と言うより日時をはっきりと記した方がわかり易いだろう。
 
 7月23日(日)。前夜から観ていたジ・オープン(全英ゴルフ選手権)のテレビ中継が午前3時過ぎにようやく終った。締め切りの迫っている月刊誌のエッセイを執筆して、ベッドに入ったのは午前5時頃。目覚ましを午前9時にセットしておいたので、起きて軽い朝食を済ませるや、マー君(田中将大)が先発する「ヤンキース対マーリンズ」のMLB(大リーグ)中継を見る。片時も目が離せないのだが、日課にしている朝刊(3紙+東京新聞)に目を通し、切り抜きを作る。つまり結構バタバタしているわけ。
 
 MLB中継が終わったのは午後一時過ぎ、マー君はノックアウト。ファンとしてはガックリだった。期限切れの近づいている焼き豚があるのでラーメンを作って昼食にする。

 昼寝したかったが、雑用が少し溜まっていたので、あれこれ処理。コーヒーをドリップして一服。3時に競馬中継が始まった。中京競馬11レースは前夜友人に馬券を頼んであるので、楽しみにしている。レースは思い通りの展開だったが、1・2着は的中するものの3着に本命馬が入って、外れた。一番人気は買わない主義だから仕方ない。これまたガックリ。

 思えば競馬と大相撲は小学校へ入る前からずっと楽しんでいるので、かれこれ75年以上も見逃したことはない。今日は大相撲の千秋楽。またテレビ見物の時間となってしまった。白鵬の39回目の優勝を見届けて、やっと休憩。
 
 そろそろ夕飯を作らねばならない。冷凍してある100gの牛肉を玉葱ベースの牛丼に仕上げる。これは私の得意料理のひとつだ。(料理については別稿に記すつもり)

 8時からNHKの大河ドラマ『直虎』を観る。住まいの近くにある銭湯(美しの湯)に10時に行き11時50分帰宅。床に着く。

 独居自由老人の多忙な休日だった。

◆自由には、リスクが付いて回る

 これでも羨ましいと思われるのなら、仕方ない。しかし、それほどゆったりもしていない。自由にはいろいろなリスクが付いて回る。
 
 食事を作る手間はかかるし、皿を洗って収納しなければならない。好きなテレビ番組を観るにしても、それなりの計画(スケジュール)を立てなくてはならぬ。遊べば仕事は必ず溜まるし、先延ばしにすれば、自由はたちまち奪われる。つまり、良いことづくめではないのである。

 無理をすれば体調を崩すし、回復するにはそれなりの時間がかかる。自分を騙し騙ししながらでも、管理をしなくては、たちまち綻びが生じる。自由はそれほど楽に手に入らないことを思い知らされる。
 
 そこで何より大切なのは、プラス思考することである。マイナス思考は落ち込むばかりか、精神的な疲労を植え付ける。どんなことでも明るい面に目を向けて、老いる楽しみを味わう道を予測する。過去を振り返るより、未来に期待する方が、どれほど身体に良いかを知ったらいいのだ。

 そんなわけで、完璧とまではいかないけれど、今ある自由にカンパイ!

【このシリーズのバックナンバーを読む】
<第1回 そもそものはじまり>
<第2回 老いはするが老人にはならぬ>

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◆矢崎泰久(やざきやすひさ)

1933年、東京生まれ。フリージャーナリスト。新聞記者を経て『話の特集』を創刊。30年にわたり編集長を務める。テレビ、ラジオの世界でもプロデューサーとしても活躍。永六輔氏、中山千夏らと開講した「学校ごっこ」も話題に。現在も『週刊金曜日』などで雑誌に連載をもつ傍ら、「ジャーナリズムの歴史を考える」をテーマにした「泰久塾」を開き、若手編集者などに教えている。著書に『永六輔の伝言 僕が愛した「芸と反骨」 』『「話の特集」と仲間たち』『口きかん―わが心の菊池寛』『句々快々―「話の特集句会」交遊録』『人生は喜劇だ』『あの人がいた』など。

◆撮影:小山茜(こやまあかね)

写真家。国内外で幅広く活躍。海外では、『芸術創造賞』『造形芸術文化賞』(いずれもモナコ文化庁授与)など多数の賞を受賞。「常識にとらわれないやり方」をモットーに多岐にわたる撮影活動を行っている。

【このシリーズのバックナンバーを読む】
●84才、一人暮らし。ああ、快適なり<第1回 そもそものはじまり>
●84才、一人暮らし。ああ、快適なり<第2回 老いはするが老人にはならぬ>

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