釜山が都市として発展する中で、多大な投資マネーが投じられているのは、釜山の誰もが認める。だが、その発展が古くからの住民の生活向上に貢献しているかというと、その質問には「なんとも言えない」というのが実感のようだった。市民全員の生活が向上しているわけではなく、建設や金融、資格職などその恩恵を受けているのはごく一部だということだった。
「古い商店や古い産業の家の子は、その彼我の差を日々見ているのは、未来の仕事に希望を抱きにくくなってると思いますね」
そうアラム代表は話していた。
会場は釜山でもっとも大きな教会の隣にあるユースホステルだった。ユースホステルと言っても、古びた建物ではない。500人以上のコンベンションホールも複数備えた、ホテル並みの施設だった。
7月最初の週に参集していた子どもたちはみな14歳、日本で言う中学2~3年生が対象だった。
どんな子たちがいるのか。
コンベンションホールの奥を覗くと、300人ほどの生徒が座っているのが見えた。
(第3回は「釜山の中高生との対話」)
《森健氏プロフィール》
1968年1月、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。在学中からライター活動をはじめ、科学雑誌、 経済誌、総合誌で専属記者を経て、フリーランスに。2012年『「つなみ」の子どもたち』で第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2015年『小倉昌男 祈りと経営』で第22回小学館ノンフィクション大賞の大賞を受賞。2017年、同書で第1回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞を受賞、ビジネス書大賞2017で審査員特別賞を受賞。