2016(平成28)年4月の電力自由化に伴って、東急の子会社「東急パワーサプライ」は電力事業に参入。1年半も経たずして、同社との契約者は約10万世帯にまで増加した。そのほとんどは沿線住民であり、東急利用者でもある。
そうした状況を考慮し、夏に東急と東急パワーサプライはコラボキャンペーンを展開する。東急パワーサプライの広報担当者は、こう話す。
「弊社では、夏の電力需要が高まる時期の日中や夕方にお出かけし、商業施設に集まってみんなで涼しく過ごす”クールシェア”というキャンペーンを昨年から実施しています。クールシェアは家庭の電気をお休み=バカンスさせることで節電意識を高める目的があります。昨年は期間中でのべ1万7000世帯以上が参加し、約5.2万kWhの節電効果がありました。今年はおでかけ特典を拡大したほか、品川区の商店街とも協力するなど、”クールシェア”の輪は確実に広がっています」
鉄道会社が新たなシェリングビジネスに乗り出す一方で、鉄道事業本体は約20年前から”シェア”の概念を導入し、利用者の拡大を図ってきた。それが持参人式と呼ばれる定期券だ。通常、鉄道やバスの定期券は券面に名前が書かれており、使用できるのは本人だけだった。ところが、持参人式は持参した人なら誰でも定期券を利用することが可能だ。
東京都交通局では1992(平成4)年から、都営バスの通勤用定期券に持参人式を導入。2000(平成12)年には都電荒川線でも持参人式定期券を登場させた。
「週休2日制が定着したことで、利用日数によってはバス共通カード(現在は廃止)を使うより定期券の方が割高になってしまうケースもありました。そのため、定期券の販売枚数が低調になったのです。利用者の利便性拡大を図ることを目的として、持参人式定期券を導入しました」(東京都交通局総務部お客様サービス課)
シェアリングエコノミーの元祖ともいえる鉄道会社が新たに取り組むシェアリングビジネス第2波は、まだ緒に就いたばかりで、これから社会を大きく変えていくかどうかは未知数だ。
それでも、シェアリングエコノミーが社会の形を大きく変え、私たちの生活スタイルに変化をもたらしたことは揺るぎない事実だ。それだけに、鉄道会社が取り組むシェアリングビジネスも今後は大化けする可能性は十分にある。鉄道会社の新シェアリングビジネスは、社会をどう創造してするのだろうか?