「休みの日は釣りに行ってます、とか言えたらいいんですけどね。1日空いたとしても、基本的に家でダラダラしています。テレビで野球中継があれば、それを楽しみに過ごすくらい。まあ、頑張る気持ちがあったら自分でタコ焼きを作って食いながら観るけど、キャベツを切ったりするのが面倒なのでかなり気合いが必要です(笑い)」
ビール一杯が限界という下戸ゆえ、いきおい外食も少なくなる。
「美味しいものは好きなんですけど、面倒くさがり屋なもんですから、出かけることはあまりしない。外食するとしても、歩きか自転車で行ける近所の店です。食べに行っても時間が持たず所在ないんですよ。女房は飲むので、悪いなと思っているんですけどね」
日常生活ではあたかも抜け殻のようだが、芝居に対しては、還暦を迎えてより強い欲が湧き出てきた。
「同級生はみんな定年を迎えている。幸いなことに僕の仕事は区切りがないから続けられますが、最近、いつ死んでもおかしくない、もう時間はあんまりないぞと思うようになりました。僕は全てにおいて消極的で、逃げて逃げての姿勢ですが(笑い)、この年になって意欲が湧いてきた。よりいい芝居、楽しいと思える芝居をやりたいと」
●だんた・やすのり/1957年生まれ、京都市出身。1981年青年座研究所卒業後、野田秀樹主宰の劇団「夢の遊眠社」に入団し、解散する1992年まで主力俳優として活躍。1996年、NHKの朝ドラ『ふたりっ子』の父親役で脚光を浴び、ドラマや映画にも活躍の場を広げる。ホームグラウンドである舞台では、蜷川幸雄、栗山民也、三谷幸喜ら多くの演出家の信頼を得ており、菊田一夫演劇賞や読売演劇大賞・最優秀男優賞など受賞歴も多数。今後の舞台は『ワーニャ伯父さん』(新国立劇場小劇場、8月27日~9月26日)のほか、2018年2月に『喜劇 有頂天一座』(新橋演舞場ほか)が予定されている。
撮影■江森康之、取材・文■一志治夫
※週刊ポスト2017年9月1日号