粗熱が取れたご飯の真ん中に梅干しを埋め、手のひらを濡らして塩をひとつまみ。ご飯を手にとり、ふわっと丁寧に握る。正方形に切ったのりを、おにぎりの上からかぶせるように置き、反対側もご飯の白い部分が出ないようにのりでくるみ、軽く握って、タオルを敷いたザルの上に並べて完成だ。1つ1つの作業が丁寧で、真ん丸に握ったおにぎりがなんとも愛らしい。
2016年に前夫、清原和博(50才)が覚せい剤取締法違反で逮捕された、亜希(48才)もまた初女さんに救われた1人だ。初女さんの最期の著書、『いのちをむすぶ』(集英社)を読んで、どんなにつらいときでもしっかり食べて真摯に生きていけば必ず道は開けると知ったと、ブログに綴っていた。
現在も「森のイスキア」で活動を継続している、初女さんの長男(2002年没)の妻、佐藤寿代さんが語る。
「義母は、“握るときに、何を考えているのですか”とよく質問を受けていました。でも“何も考えてないの、無我の境地。おいしくなあれなんて考えてない”と返すだけ。おにぎりだけではなく料理をするときは口数が少なく、そばでおしゃべりしていると怒られました。料理に没頭していたのでしょう」
初女さんがこだわったのは、素手でお米を握るということ。
「手のひらからエネルギーが出ているとよく言っていました。それを信じて丁寧に食材を扱って、丁寧に食事をすることを心掛ける人でした。食品関係の人が食材を使うときに手袋をしますよね。あんなのは愚の骨頂。きちんと手を洗って塩をつければ絶対に食中毒になるようなことはないと。最後まで手袋はしなかったですね」
市内の小学生におにぎりの握り方を教える講習会でも、子供たちに手袋をさせず、素手で握らせたという。
一緒におにぎりを食べた人とは心が通じ合う。おにぎりを一緒に食すことで、人と人の関係を結ぶのだと初女さんは信じ続けた。
◆ピース・又吉もおにぎり好き
おにぎりに思い入れがある著名人がもう1人。芥川賞作家で、お笑い芸人のピース・又吉直樹(37才)だ。
「遠足のときに母親が握ってくれたおにぎりは忘れられません。のりが水分を吸収して湿っていたのが懐かしいです。かつおぶしのおにぎりが好きでしたね」
女性セブンの取材にこう話す又吉は、いつかおにぎりを主役にした小説を書きたいと語る。
「おにぎりからは温もりと、相手に食べさせたいという気持ちが感じられるので、題材になるのではないかと思いました。スポーツとか仕事をするうえで、空腹の方がいいパフォーマンスができる場面もあるかとは思うんですが、誰もがたくさん食べられる世界は幸せそうですよね」
温もりや懐かしさを求めて、名物おばあちゃんが握るおにぎりを求めて行列ができるのもうなずけるという。
※女性セブン2017年9月7日号