東芝としては一刻も早く売却してキャッシュを手に入れなければ2期連続の債務超過は免れず、最悪の「上場廃止」になる。売却するにもさまざまな契約手続きに時間がかかることを考慮すれば、時間的な猶予はほとんど残されていないのだ。
だが、雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏は、こんな見方をする。
「もうここまで来たら、周囲の思惑は無視して原理原則に則って、一番高く買ってくれるところに売ることのみを判断基準にしたらどうでしょう。東芝は売却後も一定の影響力を持ち続けたいようですが、そんな夢も諦め、とにかく高く売る。
もしWDとの訴訟や出資比率に関わる独占禁止法の審査が長引いて来年3月までに間に合わなくても構わない。潔く上場廃止になればいいと思います。もちろん、上場廃止になれば株主に大きな迷惑をかけることになりますが、株主が今の決断力のない首脳陣を信任したからこそこの体たらくですから、やむを得ないでしょう」
いずれにせよ、ここまで地に堕ちた東芝を蘇らせるためには、思い切った変革をやり遂げる“実行力”にかかっている。関氏が続ける。
「結局、今のままでは例えメモリー事業を売却できたとしても、残るのは指導力を発揮できないトップと、競争力がそれほど強いわけではない社会インフラ事業だけ。
むしろ上場廃止に発奮し、さらには巨額の売却益を元に、ブラッシュアップした新東芝として再生し、早期の再上場を目指すぐらいの気概を見せてほしい」
不正会計問題から続く東芝の凋落は、常に“戦犯探し”が行われ、新たな首脳陣は誰も当事者意識を持ち合わせていない印象を内外に与えてきた。だが、今こそ責任感のあるリーダーが会社を引っ張っていかなければ、再建への道は遠のくばかりだ。