志を共有するソニー、オムロンも障害者就業支援に乗り出し、1981年には近代的な工場が完成。当時は1階にホンダ太陽、2階にソニー・太陽、3階にオムロン太陽電機が入り、それぞれが生産活動の管理と運営を行って、就労障害者の健康管理と日常生活の支援を太陽の家が行うという、ユニークなシステムが採用された。
オムロン太陽電機はホンダ同様、事業を拡大し、大分・別府にオムロン太陽、1985年にはオムロン京都太陽電機を設立。「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を社憲に、障害者の雇用を促進している。
◆普通に仕事をし、車に乗って、普通に人生を楽しむ
「この世に『障害者』という人種はいない。また、同じ人は一人もいない。人にはそれぞれ他にはない個有のすばらしい『持ち味』がある。その違いを互いに認め合う中に、一人の人間としての自立が生まれる。
例え、心身に障害は負っても人生に障害はない。『障害者』としてではなく『一人の人間』として社会に役立ち、普通に生きてゆく。これが私たちの基本理念『何より人間 ─夢・希望・笑顔』です」(ホンダ太陽・ホンダR&D太陽の会社案内より)
「ぼくは子供の頃から、家と病院と養護学校を行き来する生活でした。将来も授産施設(障害者の自立助長を促す職業訓練施設)で働くんだろうなあ…と漠然と考えていました」
そう語るのはホンダR&D太陽で解析業務や競技用車いすレーサーの研究開発に携わる佐矢野利明さん(29才)。
「でも、理学療法士のかたの勧めで車いすレーサーで競技に参加するようになり、ホンダR&D太陽に就職して初めて知ったんです。障害があっても、健常者と同じように普通に仕事をして、普通に車にレーサーを積み、自分で運転して練習や競技に参加する。そんな自由で楽しい生活ができるんだって」
また、工場のバリアフリー設備を担当する技師の藤内芳郎さんは健常者だが、きっぱりとこう言う。
「“障害者専用”という言葉がなくなればいいと思います。この工場の設備はすべて車いす目線で設計、階段はなくスロープです。だって、健常者はしゃがめばいいし、スロープでこと足りるじゃないですか。分ける必要は全然ないし、自分や自分の子供も、いつ障害者になるかわからないわけで、特別な人たちではないんですよ」
生前、障害者の自立支援に尽力し、国際ユニヴァーサルデザイン協議会の初代総裁も務められた“ひげの殿下”こと寛仁親王殿下の言葉を思い出した。
「100%の障害者はいない。100%の健常者もいない。人間は皆、身体(または精神)のどこかに障害部分を持っており、なおかつ健常なる部分をも併せ持っている」
食堂の大きなテーブルから、弾けるような笑い声が響いた。
撮影/川口賢典
※女性セブン2017年9月14日号