1982年には売上が400万ドルに達し、経営は好調に見えたが、内実は火の車、結果的にレス・ウェクスナー率いるLブランズに売却された。ウェクスナーはレイモンドの失敗の要因を「男性が買い物しやすい雰囲気に力を入れすぎたせいで女性客を遠ざけていた」と分析し、女性が気軽に入店しやすい雰囲気作りに努める。その戦略は実を結び、1996年には全米の店舗数は670店に増えた。なおレイモンドはその3年前、新しい事業に失敗、愛する妻にも去られ、ゴールデンゲートブリッジから身投げする悲しい出来事が起きている。
レイモンドの自殺をよそに、VSはスーパーモデルを起用することで、ますます人気ブランドに成長。広告塔も務めるモデルは「エンジェル」と呼ばれる。現在、日本で活躍するスーパーモデルのミランダ・カーも、エンジェル出身だ。ちなみに、ある男性誌が発表した「過去のベスト・エンジェル」の堂々1位に輝いたのは、ドイツ出身のハイディ・クルム。彼女たちの活躍と共に、VSの影響力はどんどん大きくなっている。
※週刊ポスト2017年9月15日号