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馬の「利き脚」考察は日本競馬の予想時の妙味

 アメリカの競馬場はすべて左回りなので、調教の段階で手前の変え方を教えますが、ヨーロッパや日本ではうるさく言って教える調教師はいませんね。

 馬の「利き脚」を考えることは、いわば日本競馬の予想時の妙味になるわけです。たとえば直線の手前脚と4コーナーの手前脚を見れば、得意コースが分かります。

 馬は鞍上の手綱さばきや重心移行によって手前を替える。高速で走る最中での手前変換は鞍上も馬も恐怖を感じます。レースでの骨折事故の多くは、この手前変換時に起こるのです。なので、あまり手前は替えたくないのですが、ずっと同じ手前で走ると疲弊してスピードが落ちていくので、この辺の塩梅が難しいところです。

 重馬場では手前変換した馬場が滑ったり、でこぼこに脚を取られたり違和感があると、何度も手前を替えてしまう馬がいます。騎手が「この馬は重馬場が苦手」とコメントするときは、何度も手前変換を行なっている可能性があります。

 手前変換の上手な馬は、それだけでも高い能力を持っているといえるかもしれません。

 なお、調教において肩の筋肉が硬くなっている馬、首の下の筋肉が硬くなっている馬も手前変換するときの動きがぎこちなくなります。

 サンデーサイレンス産駒が「やわらかい」と評されるのは、肩関節を覆う筋肉が柔軟だから。強い馬は手前を替える瞬間がなめらかなのです。

 手前変換の上手下手を見きわめるのはなかなか難しいですが、パドックで馬の前捌きがスムーズかどうかに注目してみるといいかもしれません。

●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。今年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。

※週刊ポスト2017年9月22日号

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