平日の日中にまとまった時間が取れずに通院できない人にとって、「遠隔診療」は有効な医療手段といえる。スマホやタブレットのテレビ電話を使って診察が受けられるのだ。メリットとしては、通院時間を短縮でき、場所を選ばないなどがある。
とはいえ、遠隔診療はいいことばかりではなく、できないことも多い。『新六本木クリニック』院長で、精神科医の来田誠さんは、こう語る。
「例えばお腹が痛い場合、直接触ってみないと原因はわかりません。急な発熱やけが、骨折に対応するのも不可能です」(来田さん)
日本医師会会長の横倉義武さんは、8月7日に行われた厚生労働大臣の加藤勝信氏との会談で、「遠隔診療やICT(情報通信)の活用は、あくまでも補完的な役割であり、対面診療が基本である」と強調している。
医師は問診や、患部を診るだけでなく、触診や聴診に加え、患者の顔色や息遣い、におい、表情、診療室に入ってきた際の立ち居振る舞いなど、五感をフル活用して診察を行うからだ。
ほかにも、懸念材料はある。スマホで気軽に予約ができて、分単位で診察が受けられるとなると、同じ病気で安易に複数の医師に診察を受ける人や、薬の重複処方を受ける人が出てくるかもしれない。
離島やへき地の患者と医師を簡単に繋ぐことができるようになれば、その地に常駐しようとする医師がますます減るのではないかと、心配する声もある。処方箋は紙での受け渡しが必須。メールなどでは受け取れないため、実際に薬を受け取るまでのタイムラグが生じる不便さもある。とはいえ、画面を通じた遠隔診療は、忙しい現代人が継続して診療を受けるために、新たに加わった手段であることは事実。どう利用するか、私たちの意識も問われるところだ。
※女性セブン2017年9月28日号