ライフ

緩和ケアのがん患者「家族のために生きた男の最後の選択」

森下勝博さんと和子さん

「がん」が進行し、病院で治療の術がないと告げられたときに、どんな選択肢が残されているのか。「緩和ケア」──その響きには、単に患者の痛みを和らげ、弱って死ぬのを待つだけというイメージがつきまとう。しかし、緩和ケアを選び、最後まで普段通りに仕事を続け、家族と価値ある時間を過ごせた人たちがいる。群馬・高崎の緩和ケア診療所「いっぽ」で、3年越しで医師と患者に密着取材を続けているジャーナリスト・岩澤倫彦氏がその実像を描く。

 * * *
「友達を連れてこられる家に住みたい、と娘に言われてね。よし、大きい家を建てようと、毎日4時間しか眠らないで働いたのさ。2人の娘はしっかり育ったし、母ちゃん優しいし、満足しているよ」

 家族のために生きた男の最後の選択とは──。2011年10月、群馬県伊勢崎市に住む、森下勝博さん(当時62歳)は、大腸がんが見つかり、長女・文恵さんが勤務する市民病院で左半結腸を切除した。

 この時、リンパ節転移が確認され、抗がん剤治療が始まる。その副作用が勝博さんを一変させた。

「抗がん剤を打つと興奮状態になって、まともな会話ができない。夜も眠れない。指の爪は全て割れて、血が滲んでいました。コップさえ持てないし、運転もできない。常に吐き気がする。うつ状態になって、死が頭から離れませんでした」(勝博さん)

 運送の仕事を辞め、自分の部屋に引きこもった。勝博さんは抗がん剤治療に耐え続けたが、2年後に今度は肝臓に転移が見つかる。もう限界だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紀子さま(9月24日撮影、EPA=時事)
【宮内庁騒然】紀子さまが「美智子さまを“皇后”」「ベトナム訪問を“旅行”」と表現されて
NEWSポストセブン
落合博満氏と渡邉恒雄氏の「約束」とは(時事通信フォト)
【待望論】巨人・原監督辞任なら落合博満監督の誕生はあり得るのか 退団時の渡邉オーナーとの約束
NEWSポストセブン
木村拓哉
【全文公開】木村拓哉、「事務所を立て直す」の強い思いで積極的に“全方位外交” 因縁を越えてDA PUMPのライブも訪問
女性セブン
復帰となるか
「最新手術」「二刀流継続」「新チームへの移籍」大谷翔平の“選手生命を左右する3つの賭け”
女性セブン
ジャニーズ事務所
大野智が描いた「ジャニー氏の肖像画」はもう1枚あった? 宮古島のバーに飾られた“ダークな男性の顔の絵”
女性セブン
退職届の提出が報じられた木村玉治郎(時事通信フォト)
三役格行司・木村玉治郎の退職届騒動のウラ側にあるのは「約9年ぶりの『木村庄之助』誕生と年功序列人事の弊害」か
NEWSポストセブン
10月には32才となる眞子さんと、小室氏
小室圭さん、セレブ人脈を期待され重要任務に引っぱりだこ 「表舞台から離れたい」眞子さんの希望は遠のくばかり
女性セブン
降谷建司
《MEGUMIと離婚へ》降谷建志は「モンスト」ガチ勢、不倫相手・A子さんも「真っ赤なプロTシャツ」 2人は「ストライカー仲間」だった
NEWSポストセブン
羽生結弦(AFP=時事)と末延さん
羽生結弦結婚で「地元の人達は知っていた」相手の素性がなかなか広がらなかった理由
NEWSポストセブン
フィリピン・マニラ首都圏にある入国管理局「ビクタン収容所」入り口の検査場。特殊詐欺グループから発展した広域強盗事件の指示役は収容所のなかから指示を出していたと言われている(時事通信フォト)
特殊詐欺グループの拠点「ハコ」事情 駅近、住宅街、非築浅マンション4~9階が選ばれる傾向
NEWSポストセブン
不倫相手ら“モンスト仲間”との密着写真を撮影していた降谷建志
《密着写真》MEGUMI最愛の息子と不倫相手が一緒に……我慢できなかった夫・降谷建志の“モンスト仲間”パリピ女子との不貞
NEWSポストセブン
羽生と並んで写真に収まる末延さん(写真はSNSより)
羽生結弦に飛び交う「もう別居」情報 元バイオリニストの妻は仙台とは別の場所に拠点、同居にこだわらぬスタイルか
女性セブン