オレはスタミナがないから取り直しの相撲が大嫌いだった。微妙な一番で軍配が相手方に上がると、オレは審判の顔を見たものだ。師匠と手が合う(=角界の隠語で仲が良いことの意)親方が審判をしている時は物言いの手を挙げてくれたりした。
逆に手が合わないと、オレの手が髷に触れただけで反則負けにされたこともある(北天佑戦。中立親方=元横綱・栃ノ海)。このように審判によって物言いの基準が全然違う。3度の取り直しをした時は、超真面目な鏡山審判部長(当時=元横綱・柏戸)だったというのも納得できる。
ちなみに自分のベストは横綱・大乃国を電車道で土俵外に運んだ一番(1989年大阪場所13日目)。大乃国からは金星3つを稼いでおり、張り手一発で倒した一番もあったが、やはり正攻法で勝った相撲の方が印象に残っている。
※週刊ポスト2017年9月29日号