佐藤:それぞれにスタイルが違っていた。小渕恵三さんはひたすら下を向いて紙を読む。だから会談録は完璧なんだけど、相手の心は掴めない。真逆なのが橋本龍太郎さん。すべてアドリブだから人間関係の構築はうまい反面、よく間違える。
片山:それは危なっかしい。森内閣は蜃気楼内閣と揶揄されましたが、いま振り返れば、大きな失点があったわけではないですね。しかし2001年2月に起きたえひめ丸沈没事故の対応や失言で支持率が一気に下がり、退陣に追い込まれてしまった。
佐藤:冷静に考えれば、えひめ丸は事故だから、危機管理の問題ではなかった。逆に言えば、決定的なミスを犯していないから潜在力を残して、いまだにキングメーカーとして影響力を及ぼしているわけです。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
※SAPIO2017年10月号