表題はいわゆる常套句ではあるが、そうとしか言いようのない祈りを、著者は感じてならないという。

「8人の語り手はそれぞれの人生の主役でもあって、そんな彼ら全員に幸あれと、祈るような思いでこのタイトルをつけました。幸せの定義自体、曖昧で、永遠に幸せなんてあり得ないからこそ、この常套句を美しいとすら思うんです。たぶん最初にこの言葉を使った人は、万感の思いで相手を寿いだと思う。でもそれがいつしか消費され、陳腐化したなら、元に戻すのも、小説の役割なので」

 地方の平凡で小さな結婚式が唯一無二のドラマ性を孕むのも、彼らが目の前の当たり前に真摯に向き合うから。例えば母と子の関係を1対1に戻すと、純粋に〈大好き〉な人だったりし、結婚式とはそうした発見に事欠かない、あらゆる人のための再生の儀式でもあるのだ。

【プロフィール】あさの・あつこ/1954年岡山県生まれ。現在も美作在住。青山学院大学文学部卒。小学校講師を経て、1991年『ほたる館物語』でデビュー。1997年『バッテリー』で野間児童文芸賞、1999年『バッテリーII』で日本児童文学者協会賞、2005年『バッテリー』全6巻で小学館児童出版文化賞、2011年『たまゆら』で島清恋愛文学賞。2男1女は既に家庭も持ち、「今後はどう彼らと対等でいられるかが課題。でもこの歳になると母の気持ちもわかるようになって」。157cm、A型。

■構成/橋本紀子 ■撮影/国府田利光

※週刊ポスト2017年10月6日号

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