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2017.10.14 17:00  ダイエット ポストセブン

糖質制限ダイエットに警鐘 視力低下や死亡率が高まる恐れも

過激ダイエットに注意!病が忍び寄る(写真/アフロ)

「あまりにやせたので、出川(哲朗)さんに松村だと気づかれなかったんです!」――9月13日に行われた会見で、ダイエットに成功した喜びをこう語ったのは松村邦洋(50才)。トレーニングジム『RIZAP』による肉体改造で110kgあった体重を30kg減量した80kgとなり、スッキリとした体形はたしかに見違えた。

RIZAPといえば、石田えり(56才)、森永卓郎(60才)、エド・はるみ(53才)、赤井英和(58才)など、あまたの有名人を全盛期さながらのスリム体形に導いてきた。特徴的なファンファーレとともに生まれ変わったような晴れやかな表情で美ボディーを披露するCMが印象的だ。

RIZAPでは会員1人1人に専属トレーナーが付き、「低糖質の食事」と「筋力トレーニング」をマンツーマンで徹底指導。現在、こうした手法を取り入れてダイエットを指導するジムが増加中である。

目立つのはジムばかりではない。日本全国で糖質制限ブームの勢いが止まらない。大手牛丼チェーン『松屋』と『すき家』が相次いで低糖質メニューを開発すれば、回転すしチェーン『くら寿司』は酢飯の代わりに酢漬け大根を使用するお寿司を販売。いずれも健康意識の高い女性客を中心に大人気という。

だがそこには大きな落とし穴がある。RIZAPのように、専属トレーナーの指導の下、行うのではなく、“糖質制限”だけを自己流で模倣し、短期間で急激に体重を落とそうとすると思わぬリスクが生じるのだ。

都内在住の主婦、桜井美緒さん(仮名・55才)が語る。

「炭水化物を一切食べないダイエットをしたら1か月で7kgやせました。それで喜んでいたら、ある時から目がかすむように。急いで眼科に行ったら、視力が落ちていました。先生に原因を聞くと『ダイエットの影響かもしれません』と言われました…。もともと裸眼だったのですが、この件で、眼鏡が手放せなくなってしまいました」

会社員の笠木遥さん(仮名・48才)も肩を落とす。

「1日1食の糖質量を30gに抑えるダイエットを死ぬ思いで2か月続けたところ、10kg減量。達成したときは嬉しかったものの、数日後にお風呂場に落ちている髪の量を見てぞっとしました。すごい量の髪が抜けていたんです。急いで食事を元に戻したのですが、しばらく髪は抜け続け、見るも無残な姿に」

きれいになるためにダイエットを始めたのに、身も心もやつれていく。

◆長期的に糖質制限を続けると死亡率は1.3倍に

過度な食事制限による人体への影響は、まず「目」に出るという。松原眼科クリニックの松原令理事長が語る。

「目の機能は、数ある栄養素の中でも、特にビタミン全般によって支えられています。これが不足すると眼精疲労になり、視力が低下する危険性があるんです。例えば、ビタミンAが不足すると角膜の潤いがなくなってしまう。行きすぎた食事制限によって、本来摂るべきビタミン類まで欠乏した結果、目の不調を訴えるケースは確かにある。“栄養の偏り”は目の天敵なんです」

食事と目の関係に詳しい丸尾眼科の丸尾敏之院長もこう指摘する。

「最も怖いのは、食事制限で視力が悪化しながら、そのままダイエットを続けた場合です。食生活を正せば目の機能も基本的に回復していくのですが、栄養不足の状態が慢性的に続くと、悪化した視力が戻らない可能性が出てくる」

無論、視覚以外にもさまざまな悪影響が出る。

新潟大学名誉教授の岡田正彦さんは、とりわけ「糖質制限」の危険性についてこう語る。

「人間が摂取した炭水化物(糖質)は体内でエネルギーとして使われ、余った分が脂肪に変わって内臓や皮下に蓄積されます。糖質を減らせば脂肪が減るのは当たり前で、誰でもやせられる。その代わり、健康へ与えるリスクも非常に大きい。

2013年に国立国際医療研究センターの研究グループが『糖質制限食を5年以上続けると死亡率が高まる』と報告している。

「信頼性の高い4つの論文の約27万人分のデータを分析したところ、低糖質の食事を続けていた人たちは、高糖質の人たちに比べて死亡率が31%上がっていたのです。つまり、糖質制限を続けると健康にいいどころか、死亡率が1.3倍に増えるということです」

◆糖質制限食以外にも注意が必要

糖質制限で死亡率が上昇するのは、「たんぱく質・脂質・糖質(炭水化物)」という「3大栄養バランス」が崩れて体の調節機能が劣化し、さまざまな病気が増えるからと分析される。

「“糖質を食べない代わりに肉は好きなだけ食べていい”という宣伝文句を信じてご飯やパンを食べずに、肉だけ食べる人が出現した結果、心筋梗塞が増加しました。肉ばかり食べると、肉類に含まれる脂肪酸やコレステロールの過剰摂取によって血管が詰まり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増すんです」(岡田さん)

事実、米国のハーバード大学は、「糖質制限食を続けると心筋梗塞や脳卒中の発症率が高まる」と、2012年に英医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』で発表。スウェーデンの30~45才の女性4万3396人を対象に食生活を調査し、約16年間、心筋梗塞や脳卒中などの発症を追跡したところ、「低炭水化物・高たんぱく質」のグループは、そうでないグループに比べて発症リスクが最大1.6倍高まったという。

悠翔会在宅クリニック柏の佐々木淳院長は、「糖質制限以外のダイエット」でも注意は必要だと指摘する。

「例えば無農薬野菜や玄米食を中心とするマクロビオティックではたんぱく質と脂質の摂取が不足する可能性があります。適度な運動を組み合わせないと筋力の低下が早まる恐れがあります。

体内の筋肉、内臓、血液はすべてたんぱく質と脂質でできているため、“原料”の供給が不足すると体全体が脆弱になり、貧血や骨粗鬆症、内臓機能や免疫力の低下が生じる。そこから2次的にさまざまな病気が発症するリスクがあります」(佐々木さん)

◆筋肉の減少で寝たきりに

中高年のダイエットは特に注意したい。さまざまな回復機能が衰える中高年は若年層よりダイエットの“副作用”が大きい。

悠翔会在宅クリニック柏の佐々木淳院長さんは、「中高年のダイエットで最も危惧すべきなのは筋肉の量が減ってしまうこと」と指摘する。

「食事制限のダイエットをすると、脂肪よりも筋肉の方が多く減ってしまいます。筋肉は加齢によって少なくなっていきますが、ダイエットで筋肉の減少が加速すると、運動機能も低下し、転倒などのリスクが増加します。とくに女性は閉経後に骨密度の低下が急速に進むので、転倒・骨折から寝たきりになることもあります」

もう1つ注意すべきなのは、生命活動を維持するため体が自動的にエネルギーを消費する「基礎代謝量」が減ることだ。

「例えばダイエットをして筋肉が5kg減ると、250kcalほど基礎代謝が減ります。基礎代謝が減るとエネルギー消費量が減るため、同じ量を食べてもカロリーオーバーで太りやすくなる。ダイエットが成功して喜んだ後、普通の生活に戻すと体重が増えてリバウンドするのは基礎代謝が減るからです」(佐々木さん)

島原病院肥満・糖尿病センター長の吉田俊秀さんは、「中高年ほどリバウンドリスクが高くなる」と指摘する。

「急激なダイエットをすると全身の筋肉とともに心臓の筋肉も減少します。その状態でリバウンドして脂肪が増えると、全身に血液を送るため心臓にかかる負担が通常の2~3倍になり、少し歩いても息苦しく感じるようになります。間違ったダイエットでは、年配になるほど心臓の機能は低下しやすいので、リバウンドした際の負担はさらに増すことになります」

「ダイエット→リバウンド→ダイエット→リバウンド」と繰り返していくと、体がボロボロになってしまうのだ。これらの問題に対し、RIZAPはどう対応しているのか聞いたところ、次のような回答だった。

「昨今、低糖質食事法が人体に与える影響について、さまざまな見解がなされています。賛否両論がある中で、弊社では社会の疑問にこたえるべく、これまで低糖質食事法やレジスタンス運動(筋肉に負荷を繰り返しかける運動)について、東京大学や筑波大学の先生と科学的な検証を行ってきました。

その結果、これらが生活習慣病のリスクや体組成および血液生化学項目に対し、安全かつ健康数値が改善することがわかっております。

また弊社では医療機関とも連携させていただいており、高齢者、心臓疾患、糖尿病、などのかたには、 医療機関と連携したメディカルスタッフが適切な指導を行いながら、安心してボディーメークに取り組んでいただける環境をご提供しております」(スタジオ事業部)

◆食べる量全体を少なくすることが健康美人への近道

ここまで食事制限ダイエットの危険性を紹介してきたが、どのようなダイエットなら安心できるだろうか。多くの識者が推奨するのは、「食事療法と運動療法の組み合わせ」だ。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが語る。

「運動には筋肉と骨を丈夫にする効果があり、ダイエットにともなうリスクを軽減するので必要不可欠です。ジムに通わなくても日常生活のちょっとした運動で充分。例えば階段を上るのはエネルギーを使うので、駅やデパートでは常に階段を上るよう心がけましょう。

ウオーキングの場合はぶらぶら歩くのではなく、少し脈が上がるくらいの早歩きをするのが効果的。1週間に、150分以上を目安に体を動かしてほしい」

食事も過度に制限するのではなく、栄養バランスを考えながら全体のカロリーを抑えることが重要だ。

「糖質をゼロにする極端なダイエットではなく、食べる量全体を下げることが健康にやせるための秘訣です。三大栄養素のバランスが理想的とされる和食中心の食事にして、量を抑える方法がおススメです」(岡田さん)

ダイエットが成功すれば、身も心も軽やかになる。「栄養バランス」と「運動」に注意して、この秋、あなたも“生まれ変わり”をめざしてみては?

※女性セブン2017年10月12日号

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