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コラム

2017.10.16 11:00  介護 ポストセブン

薬には効く時間帯がある!がん、気管支喘息など病気別に解説

投薬時間で薬の効果が変わる(写真/アフロ)

 病気の発症は「時間」が大きく関係するという。九州大学大学院薬学研究院の小柳悟教授は「これまでの医学には病状は『一日の中で、大きく変化しない』という固定観念がありましたが、最近は『病気が悪化する時間帯がある』という考え方が出てきました」と話す。では、具体的にいつ、どんな薬をのめばいいのか。病気ごとに解説する。

◆気管支喘息

就寝前のタイミングが最適

 気管支喘息は午前1時頃から明け方にかけて発作が出やすい。自治医科大学客員教授・蓮田病院学術顧問の藤村昭夫医師が解説する。

「生体リズムの影響で、人間の気管支の径の太さは昼間に比べて夜間のほうが細くなり、空気が通りにくくなるため、深夜から明け方にかけて発作が出やすくなります。この時間帯に薬を効かすには、就寝前のタイミングで服薬するのが最適です」(藤村医師)

◆高血圧

「ACE阻害薬」と呼ばれるタイプの薬は、とくに夕方の服用がお勧め

 全国に患者数が1010万人いるとされる高血圧。血圧が高いままだと動脈硬化が進展し、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす恐れがある。

 一般的には朝の時間帯に血圧を下げる降圧剤をのむ人が多いが、人によっては時間を変えた方が効果的だという。

「ポイントは、夜中に血圧がどれくらい下がっているか。夜中に血圧が充分下がらない人を“ノン・ディッパー”と呼びます。この状態は動脈硬化が進行しやすく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高くなる。“ノン・ディッパー”は、通常のように朝ではなく夕方に降圧剤をのんで夜間の血圧を下げる必要があります。

 こういうかたが朝、薬をのむと夜間の血圧を思うように下げることができず、動脈硬化の進行を防ぐ効果が小さい。昼間の血圧に比べて、夜間の血圧が10~20%下がるのが理想です」(藤村医師)

 降圧剤のうち「ACE阻害薬」と呼ばれるタイプの薬は、とくに夕方の服用がお勧めだと藤村医師が続ける。

「ACE阻害剤は夕方に服用すると夜間の降圧効果が大きくなる。朝にこの薬をのむと咳き込むかたも多いですが、私たちの研究では、夕方の服用に変更すると咳がなくなったり軽減されることを確認しています」(藤村医師)

◆高脂血症

スタチン系薬剤は、夕食後か就寝前に服用すると最大限の効果

 高脂血症(脂質異常症)は血液中の悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪などが増加する病気で、高血圧と同じく動脈硬化を起こしやすくなる。放置すると脳梗塞や心筋梗塞の発症につながるため、生活習慣の改善とともに「スタチン系薬剤」という治療薬を服用することが一般的だ。九州大学大学院薬学研究院の小柳悟教授が話す。

 この病気における時間治療のポイントは、「悪玉コントロールの撃退」にあるという。 「悪玉コレステロールは夜間に肝臓で作られることが多い。スタチン系薬剤は、夕食後か就寝前に服用すると最大限の効果を得られる」(小柳教授)

◆関節痛、神経痛

就寝前に「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」などの「非ステロイド系抗炎症薬」をのむと効果的

 時間治療は病気がもたらす「痛み」にも適用できる。国内最先端の痛みの研究を行う小柳教授は、「痛みが激しくなる時間帯」を突き止めた。

「痛みの鍵を握るのは、脳が生体リズムを刻むため命令を出す際に分泌されるステロイドホルモンです。関節痛や神経痛のある人の場合、ステロイドホルモンが夜間から早朝にかけて傷ついた神経に到達することがわかりました。

 つまり、関節痛や神経痛は夜から朝にかけて痛みが最も強くなるんです」

 この時間帯に増す痛みを抑えるためには、就寝前に「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」などの「非ステロイド系抗炎症薬」をのむと効果的だ。

「ただし、夜間に非ステロイド系抗炎症薬をのむと胃が荒れることがあります。胃の痛みを感じたら、すぐ医師や薬剤師に相談しましょう」(小柳教授)

◆がん

時間治療で副作用を軽減できる抗がん剤が登場

 抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞も攻撃するので、どうしても副作用が出現することがネックになってきた。しかし昨今、時間治療で副作用を軽減できる抗がん剤が登場してきている。

 その代表的な例が、主に固形がんに利用される抗がん剤「フルオロウラシル」だ。

「夜間になると、肝臓はこの薬を分解する酵素を多く分泌するため、夜中に投与すれば正常細胞への攻撃力が弱まって副作用が軽減されます。昼間の投与と比較して、夜間の投与は薬の量を1.5倍まで増量できたという症例もあります」(小柳教授)

 大腸がんにも、昼に投与すると副作用が出にくい抗がん剤「オキサリプラチン」が登場している。

 海外の臨床研究機関が大腸がん患者を対象にフルオロウラシルを夜、オキサリプラチンを昼に投与した群93名と、両方の薬を昼夜分けずに投与した群93名を比べたところ、後者の寛解(がん細胞が消えた状態)率が29%だったのに対して、前者は51%に達した。

「それほどの効果があるのに、時間治療はまだ認知度が低く普及が進んでいません。子宮がんや卵巣がんでも時間治療が有効だった研究結果もあり、今後はより周知を図りたい」(藤村医師)

◆サーカディアンリズムを整える

 そもそも時間治療が効果を発揮するためには、規則正しい生体リズムを維持することが必要不可欠だ。

「不規則な生活を続けると生体リズムが崩れ、免疫や酵素などの働きが低下して病気になりやすくなる。夜勤の多い看護師や日付変更線を行き来するキャビンアテンダントは、がんの発症率が高いという報告もあります」(小柳教授)

 そこで意識したいのが24時間周期の生体リズムだ。ナグモクリニック総院長の南雲吉則さんが語る。

「人間のほぼすべての細胞には『体内時計』が備わっていて、24時間周期で“陽”と“陰”を繰り返して健康のバランスを保っています。この周期を『サーカディアンリズム』と呼びます」

 健康維持のためのサーカディアンリズムを整えるポイントを南雲先生が指摘する。

「毎朝、早起きして朝日を浴びると体内時計がリセットされて新しいサイクルが始まります。

 この時、水か白湯を飲むと自律神経のスイッチが入って身体のバランスを整えます。朝食と昼食は糖質を控えて、夜は遅くとも10時に寝れば、睡眠により疲れた体を修復できる。要するに、規則正しい生活を繰り返すことが健康維持のために何より大切なのです」

 普段から意識して体内時計を整えることが、健康を手に入れるいちばんの近道だ。

※女性セブン2017年10月19日号

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