芸能

桃月庵白酒 古典の世界観を壊さず現代を自然に持ち込む

桃月庵白酒の魅力を落語通が解説

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)が、いかにして時代を超えた落語の普遍性を気づかせてくれるかについてお届けする。

 * * *
 落語ファンがエンターテインメントとしての落語を積極的に求めてチケットを買うホール落語と異なり、毎日営業している寄席の定席における落語は、いわば「日常」だ。その、日常的に供給される古典落語の面白さの質を飛躍的に高めた演者が桃月庵白酒である。

 2005年に真打昇進した白酒が寄席の世界で新感覚の爆笑古典を日々演じ続けたことの意味は大きい。あの春風亭一之輔にしても、白酒が「羊の皮を被った狼のような古典」で土壌を開拓したからこそ、今のように存分に暴れることが許されているのだ。

 白酒は宗教チャンチャカチャン的な『宗論』など飛び道具も持っているし、『幾代餅』『富久』『芝浜』といった大ネタの独自解釈で落語ファンを唸らせもする。だが彼の真骨頂は「地味な演目を楽しく聴かせる」ことにこそある。8月24日の「J亭落語会 桃月庵白酒独演会」は、ホール落語でありながら、そんな「寄席の白酒」の魅力を堪能させた。

 演じたのは3席。『金明竹』は上方言葉の口上が聞き取れないというおなじみの前座噺だが、口上の聞き間違い方が通常とはまるで異なり、「仲買の弥市が友情を育んだ工場の掃除夫を寸胴切りにして、タクアンをゼンジー北京がインゲンマメに変えて、屏風の向こう側にダウンスイングの坊さんがいる」のだという。こんなのは白酒でしか聞けない。前座噺も白酒の手に掛かると新鮮な爆笑落語となる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン