「事故の後、義理の息子と2人の孫は、亀岡市を離れました。事故さえなければ今も幸せに暮らしていたはずなのに…。独りになると心が沈んで、『娘のもとへ逝きたい』と思ってしまう」(中江さん)

 中江さんは危険運転致死傷罪が見送られたのちも、他の遺族とともに危険運転の厳罰化を望む署名活動を続けた。結果、無免許で人身事故を起こした場合の罰則を重くする「自動車運転死傷行為処罰法」が2014年に成立している。

 亀岡市の事故で次女の真緒ちゃん(当時7才)を亡くした小谷真樹さん(35才)は、今回の東名高速事故についてこう語る。

「石橋容疑者の運転は、危険運転致死傷罪の構成要件である『妨害行為』そのものでしょう。最初の報道を見て、完全にこれに該当すると思ったのに、なぜ過失運転致死傷罪での逮捕なのか。高速道路であおり運転をして進路を妨害し、追い越し車線に無理矢理停止させている。誰がどう考えたって、追突の危険性は明白です。直接ぶつかったかどうかではなく、事故の原因を作ったかどうか、という点で判断されるべきだと思います」

 小谷さんもまた、事故から今日まで、時間が凍り付いたままである。

「この5年間、穏やかな気持ちになることが一度もありません。娘を亡くした喪失感は少しも埋まることがない。5年前に戻してほしい、毎日そう思っている自分がいます。東名高速事故のような危険運転は全国各地でいまだに起きています。こういうニュースが報じられるたびに、当時を思い出し、絶望感で押しつぶされそうになる。私たちの事件はなんの教訓にもなっていないのか、と…」

 中江さんもこう話す。

「この事故で危険運転致死傷罪を適用できなかったら、何のために新しい法律ができたかわかりません。法律が被害者に寄り添わず、ぼくらみたいな悔しい思いをする遺族が増えることが心苦しいです。今回の事故はぼくらとしても見守りたいし、可能であれば傍聴にも行きたいと思っています」

※女性セブン2017年11月2日号

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